光言社 編集者ブログ

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2026年06月18日

ある一人の女子学生の死と、教育支援

 海外の子供たちの教育支援(給付奨学金)に携わるようになって25年になります。
 世界平和のためになる実践がしたい、それが教育支援の活動を始めるきっかけでした。以来、無償でやってきました。

 現在は、フィリピンの子供たちの教育支援にフォーカスしています。
 試行錯誤を重ねながら歩んだ四半世紀でしたが、大きな転機となったのは2013年でした。

 2013324日、私は一つの新聞記事を目にしました。
 フィリピンの大学に通う女子大生が学費を払えず停学になったことを苦に薬物を飲み込んで自ら命を絶ったというのです。

 当時のフィリピンは日本のような6-3-3制ではなく、6-4制が取られていました(現在は、6-3-3制)。その女子学生は大学1年生、16歳でした。払えなかった学費は1万ペソ(当時のレートで約23千円)。タクシー運転手として働く父親の収入だけでは学費の捻出が難しかったのです。学費の支払いが滞った彼女に、大学側は規則に従い停学処分を下しました。その数日後、将来を悲観した彼女は自殺したのです。

 彼女の死は、同じような境遇に置かれた学生たちの共感を呼び、大学当局への抗議活動へと展開し、さらに抗議の波は他の大学にも飛び火していったのです。

 この記事に触れるまでは、教育支援に携わる私の動機は、貧困下に置かれた子供たちに対してハイスクール(義務教育)卒業までは学校に通えるように支援してあげられたらいいよね、といったものでした。

 しかし長年活動を続ける中で、貧困の世代間連鎖を断ち切り、社会的に自立できるまでに至ることは容易ではないということが分かってきました。そのような中で、大学に進学し大学を卒業することは、彼らにこそ、人生を変え得る大きなポテンシャルとなるものなのだと理解するようになったのです。

 もちろん大学を卒業することが人生の全てではありませんが、彼らにとって大学に進学し、優秀な成績で卒業することは、貧困の連鎖から脱出し、真に自立して生きていくための必要条件となり得る道だといっても過言ではありません。

 女子大学生にとって、学費未納による停学処分の重圧は、どれほど苦しく、つらかったでしょうか。しかしこれは彼女だけが置かれた境遇ではありません。まさに氷山の一角に過ぎないのです。

 子供たちが大学進学を目指し、可能な限り優秀な成績で卒業できるようにサポートしよう。夢と志を持って生き、社会のリーダーとなる青年たちを育成する教育支援事業にしよう。

 縁もゆかりもない一人の女子学生の死が、私のマインドセットを変えたのです。

 私の教育支援を行う動機は、教育行政へのコミットメントでもなく、貧困者への同情心でもありません。
 支援する心は、親が子を思う心、兄姉が弟妹を思う心、家族愛を根とするものでありたいと思っています。心情文化、人類一家族のスピリットで行う教育支援でありたいと考えるからです。

 今年も、2013年当時小学生だった子供たちが大学を卒業していきました。足かけ13年の教育支援であり、成長支援です。「クム・ラウデ」(成績上位1015%程度の優等生に贈られる学位の成績評価・称号)を手にする者も少なくありません。実に誇らしい限りです。

 角帽とアカデミックガウンをまとった卒業式での彼らの輝きに触れる時間は、わが子を見つめる人類の父母なる神様の心情を感じる瞬間でもあります。


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