今年4月下旬、自宅から6キロメートルほど離れた竹林で、この時期が旬のたけのこ掘りをしました。孟宗竹(もうそうちく)の林の持ち主は、相対者の親戚であるMさん(91歳、男性)。春になると、いつもスーパーでたけのこをねだる私のことを思って、相対者が話をつけてくれたのでした。
昨年還暦を迎えた私ですが、恥ずかしながら、これまでたけのこ掘りはやったことがありません。さっそくたけのこ掘り用に、ネットで細身の鍬(くわ)を購入し、準備しました。
収穫したたけのこ
Mさんの案内で竹林に入ると、そこは竹と竹の間隔が広く、いかにも掘りやすそうな空間でした。
「掘ったたけのこをあげて感謝されることは多いけど、掘りたいという人はいないから、いつも俺ひとりで掘っているんだ。あんた、珍しい人だね」
うれしそうな表情で語るMさんに、「たけのこが好きなんです」と答える私。地面を見ると、ところどころにたけのこの穂先が少しだけ頭を出していました。そういえば数日前に雨が降り、「雨後のたけのこ」とはこの光景のことなのかと、ひとりで納得していました。
師匠役のMさんが、説明をしながらたけのこを掘り、手本を見せてくれました。師匠はシャベルを手に、たけのこの穂先に沿って土を下に掘り進めます。たけのこは幾重もの皮に覆われていますが、下に行くとその皮が途切れ、本体に黒っぽいポツポツ模様のある部分が見えてきます。そこにシャベルを斜め横からあてがい、足を使い一気にザクッと切り取るのです。
「見た通りやってみな」
師匠のお許しが出て、鍬で土を掘りました。皮の下方の黒っぽいポツポツ模様が見えたので、鍬を振り下ろし切り取ろうとしたのですが、刃先の幅がたけのこよりも短いため、一度では切れません。6、7回振り下ろし、ようやく1本掘り出すことができました。
大人の太ももくらいの太さのたけのこです。皮つきのままだと想像以上の重さになり、2キログラムほどありそうでした。
汗が出るので、途中、水分補給の休憩をとります。竹林は違う地主の土地につながっていて、そちらの竹林を見ると、高さが約2メートルまで成長したたけのこ?がありました。私が報告すると師匠は、「たけのこは一気に成長するから、10日もたてばすぐ人間の背丈を超えてしまうんだ。この高さになると、もう固くて食べられない」と言いつつ、切り取っていました。
そこの土地は他人の持ち分ですが、「このままだと竹藪になってしまうから、放おっておくわけにはいかない」とのことでした。自分の竹林でも、たまに季節外れのたけのこが出てくるため、見つけたら必ず切り取るそうです。ここの竹林は、そのようにして維持されてきたことを知りました。
ふたりで26本収穫したうち、私は14本、重さにして30キログラムほどを譲ってもらいました。「収穫したばかりのものは乾燥させると茶色くなるから注意するように」との言いつけを守り、自宅の屋外で水洗いし、濡れた新聞紙をその切り口にあてがいました。
頂いた14本のたけのこ
頂いた14本のうち自宅用は4本で、あとはその日のうちに皮つきのまま友人たちにあげました。
たけのこを食べるには、アク抜きが必要です。まずは水を入れた大鍋にお米をひとつまみ入れ、皮をむいたたけのこをゆでます。取れたてなので、1〜2時間ゆでたあと鍋に入れたまま冷ませば、翌朝にはアクが抜けています。先の柔らかい部分はスライスし、わさびじょうゆで食べました。そのほかの部分は、相対者がたけのこご飯にしてくれました。
来年は小ぶりのシャベルを手に入れ、師匠のようにザクッと切り取りたいと思います。(F)
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