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2023年04月13日

こよみのヒミツ

暦よもやま話②「太陰太陽暦のレシピ」

 

 カレンダーの業界では、日付の部分を「月表」と呼んでいます。月表を構成する要素としては、日付をはじめ、「二十四節気」(立春、春分、夏至、秋分、冬至など)や、「六曜」(大安、友引、仏滅など)、国民の祝日など、いくつかあります。また、中には旧暦(太陰太陽暦)の1日と15日を小さく記載しているものを見かけることもあります。

 全国には多くのカレンダー業者が存在していますが、書店で販売されている高価なものから、100円ショップにある安価なものまで、基本的に月表の内容には違いがありません。それは、カレンダー業界が、皆同じものを「確たる情報源」として使っているからです。

カレンダーのヒミツ

 その情報源とは、国立天文台(正式には大学共同利用機関法人自然科学研究機構国立天文台)が毎年2月1日に発表している、「暦要項」(れきようこう)です。暦要項には、翌年の国民の祝日、日曜表、二十四節気、朔弦望(さくげんぼう、月齢表のこと)などが掲載されています。

 

  

「暦要項」(一部分)
©国立天文台

 

 陽暦は各月の日数が毎年一定で、閏年のみ2月が1日増えるだけなので、月表の日付は誰でも同じものが作れます。あとは暦要項に記載されている情報を当てはめればいいだけなのです。

 内閣府発行の2月1日付「官報」に暦要項が掲載されると、全国のカレンダー業者はそれを入手し、翌年のカレンダーの月表の部分を制作します。最近は国立天文台のサイトに暦要項が掲示されているので、情報がより入手しやすくなりました。

 旧暦の1日と15日は、暦要項にある「朔弦望」の表を参考にします。朔(ついたち)が陽暦の何月何日になるかが記載されているからです。しかしその朔が旧暦の何月なのかを調べるには、旧暦のルールを知らなければなりません。

旧暦のルール

 旧暦は、朔(ついたち、さく)を毎月の始まりとしています。
30日あるのが「大の月」、29日あるのが「小の月」です。江戸時代には、大の月は何月と何月、小の月は何月と何月というように、月の大小が分かるようにした「大小暦」(だいしょうれき)が庶民の間で広く利用されていました。

 


江戸時代の大小暦(慶応2年丙寅) 「日本の暦」(国立国会図書館)から

 

 これを知ってしまうと、時代劇のテレビ番組を見たとき、役者の背後の柱に貼り付けてある大小暦が気になってしまうかもしれませんね。けっこうな頻度で見かけます。

 また、月の満ち欠けによる暦だけでは季節と合わないため、太陽の観測により二十四節気を定め、農作業のときの季節を知るうえで役立てました。二十四節気は、太陽が天球を一周する1太陽年を24等分したものです。先ほど触れた立春、春分、夏至、秋分、冬至などは、私たちの生活にも根づいています。月の名を決めるには、二十四節気のうちの十二の「中気」(リスト参照)を用います。

 

二十四節気と月名

 

 旧暦1月1日(年始)は、冬至の翌々月の立春の頃に設けられます。また1月の中気には必ず雨水が含まれるようにします。

 二十四節気のリストをご覧ください。雨水は正月の中気です。この雨水が含まれる朔から次の朔の前日までの1か月が、正月(1月)になります。なお、中気を含まない月は、閏月(うるうづき)としてもう1回繰り返すことになります。これら、閏月の入れ方のルールのことを「置閏法(ちじゅんほう)」といいます。閏月を入れる頻度については、ギリシャの数学者が19年に7回入れる方法を発表しており、これは学者の名前をとって、「メトン法」と呼ばれています。

 珍しいことに、1年の中で「中気」を含まない月が複数存在するケースがあります。直近では、それが2033年にやってきます。すると、何月を閏月とすべきかを決められません。カレンダー業界ではこれを「旧暦2033年問題」と呼んでいます。

 東アジアの諸国の中では、韓国の「秋夕」(チュソク)や台湾の「中秋節」などのように、太陰太陽暦で決められた公休日が幾つかありますので、その頃になったら少し話題になるのではないでしょうか。(F)

 

陽暦と太陰太陽暦が併記されている台湾のカレンダー
今年は太陰太陽暦のところに閏月が入っています

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