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2014年01月02日

【韓国昔話1】フンブとノルブ

【韓国昔話1】フンブとノルブ

 

 昔、ある村に、フンブとノルブという兄弟が住んでいました。フンブは、心がとてもやさしく、正直な人でした。いっぽう、兄のノルブはとても欲深く、ずるがしこい人でした。

 ノルブは、親からゆずりうけた財産を弟のフンブには少しも分けてあげず、ひとりじめしていました。

 そして、家もまた、親からゆずりうけた家でしたが、その家にフンブの家族が一緒に住んでいることが気にくわず、いいがかりをつけて、フンブの家族を家から追い出す口実を探していました。

 ある日のことです。

 いじわるなノルブがキセルを口にくわえて、家の中庭を行ったり来たりしていました。その姿を見たノルブの妻が長いスカートのすそを荒々しくたくしあげて近づいてきました。

 「何をそんなに考えこんでいるのですか」

 「フンブの家族を追い出す方法がまったく浮かんでこないのだ」

 そう言って、ノルブが首を横にふりました。すると、ノルブの妻は、チッチッと舌打ちをしながら言いました。

 「本当にじれったいですね。そのまま追い出せばいいではないですか。何の方法が必要ですか」

 その言葉を聞いて、ノルブは口もとにすっと笑みを浮かべ、ひざをぽんとたたいて言いました。

 「そのとおりだ。なぜ、今までそのことに気づかなかったのだろう。すぐにおまえの言うとおりにしよう。やはりおれの女房だ」

 ノルブは、フンブの住む下僕部屋へ、すたすたと大またで歩いていきました。そして、大声でフンブを呼びつけました。

 「エヘン。フンブ、中にいれば出てきなさい」

 フンブは、兄ノルブの声を聞くやいなや、すぐに部屋のとびらを開き、靴もはかないで庭まで飛び出してきました。

 「お兄さん、どうかなさったのですか」

 フンブは、目を丸くしてたずねました。

 「つべこべ言わずに、おまえの家族を連れて、すぐにこの家を出ていけ!」

 ノルブはどなりつけるように言いました。フンブは、あまりに突然の言葉に、びっくりしてノルブのそでにすがりついてうったえました。

 「ええっ、お兄さん、それはいったい、どういうことですか。この大勢の家族を連れて、どこへ行けと言うのですか」

 ノルブは、フンブの言葉など意に介さず、冷たくそでをふりはらって、そっぽを向きました。

 しかたなく、フンブは荷物を一つひとつまとめて、家族と一緒にノルブの家を出ていきました。

 「ああ、この寒い冬の日に、どこに行ったらいいのか」

 フンブは妻と子供たちを見て、悲しみのあまり涙を流しました。

 しばらく歩いていくと、山の中に古びた一軒の家がありました。そこは、だれも住んでいない空き家のようでした。

 「ここで冷たい風をさけて暮らそう」

 フンブの一家は、その家で暮らすようになりました。

 ところが、十人以上の家族がたった一間の部屋で生活するので、その不便さは並大抵のものではありませんでした。そればかりでなく、食べる物がなく、ご飯を抜くことがたびたびありました。

 ある年の冬、妻がため息をついて言いました。

 「子供たちが二日間、何も食べていません。精白した麦でも少しもらってきてくれればいいのですが‥‥」

 妻の言葉に、フンブは首をがっくりとうなだれ、力なく言いました。

 「分かった。すぐにお兄さんの家に行ってこよう」

 フンブは、兄のノルブの家に訪ねていきました。

 「お兄さん、お兄さん、門を少し開けてください」

 フンブの声に、ノルブは顔をしかめながら、召使に門を開けるように言いました。

 「お兄さん、麦を少しいただけないでしょうか。子供たちがお腹を空かして‥‥」

 「何だと? 腹を空かしているだと? 何回食糧をもらえば気がすむのだ。もう、ひとにぎりの麦もやることはできない。すぐに私の家から出ていけ」

 ノルブは大声でどなりつけました。その声を聞いて、台所でご飯をよそっていたノルブの妻が、しゃもじを持って出てきました。

そして、いきなり、そのしゃもじでフンブのほっぺたをぴしゃりとひっぱたきました。フンブは、麦をもらうどころか、ほっぺたに赤黒いあざをつけられて家に帰ってきました。

 フンブの家の子供たちは、「お腹が空いた」と言って泣きながら過ごしました。

 月日は流れ、翌年の春になりました。

 フンブの家につばめの夫婦がやってきて、巣をつくりました。フンブは、朝に夕に、つばめたちを見上げながら、何事もなく無事に育つことを願いました。

 そのようなある日のことです。フンブの妻が、フンブをあわただしく呼びました。

 「あなた、あれを見てください」

 フンブの妻が、おびえたまま、つばめの巣を指さしました。見ると、大きなヘビが、一羽のつばめのひなを取って食べようとしていました。フンブはすぐに長いぼうきれを持ってきて、大きなヘビをおいはらいました。

 しかし、そのとき、一羽のつばめのひなが巣から落ちて足を折ってしまいました。フンブは、心を込めて、ひなの折れた足を治療してあげました。そのおかげで、そのひなの折れた足はすぐによくなり、元気よく飛びまわることができるようになりました。

 その年の冬、つばめの家族は、暖かい南の国へと旅立っていきました。フンブの家族たちは、手をふりながら、つばめたちを見送りました。

 「つばめたちよ、元気でなー。来年の春にまた会おうー」

 再び、暖かい春になりました。

 「チッチッ、チッチッ」

 つばめたちが、フンブの家族たちの頭上をぐるぐる飛びまわって鳴きました。

 「おー、おまえたちか! 忘れずに訪ねてきてくれたのだなあ」

 フンブは、満面の笑みを浮かべてつばめたちを見上げました。そのとき、一羽のつばめが、くちばしにくわえていた一粒のフクベの種をぽんと落としました。

 フンブは、その種をひろって日当たりのよい場所に植えました。

 種は芽を出し、すくすくと育ちました。そして、秋になると、わらぶき屋根の上に、大きなフクベが鈴なりに生りました。

 フンブは、妻といっしょにフクベを割ってみることにしました。

 「ギコギゴ、ギコギコ、のこぎりで切ろう」

 しばらくすると、最初のフクベがぱかっと割れました。フクベの中には、金銀の宝物と絹織物がぎっしりと入っていました。

 びっくりしたフンブは、心を落ち着けて、二つ目のフクベを割ってみました。すると、今度は、米と豆の入ったかますがいっぱい出てきました。フンブの家族たちは喜びの声をあげました。

 「お父さん、早く残りのフクベも割ってみてください」

 子供たちがフンブをせきたてました。突然のことで頭がくらくらしているフンブは、最後のフクベを割ってみました。すると、フクベの中から大工たちが出てきて、たちまち大きくりっぱな瓦屋根の家をつくって消えてしまいました。

 このようにしてフンブはお金持ちになり、楽に暮らすことができるようになりました。このうわさを聞いたノルブは、くやしくてたまらなくなりました。

 「こんなことがあっていいものか! あんなに貧乏だったフンブが、私より金持ちになるとは‥‥。すぐに行って、高価な品物を奪ってこなければ」

 翌日、ノルブは、朝ご飯もそこそこに、大急ぎでフンブの家に行きました。

 「フンブはいるか」

 ノルブは、大きな声でフンブを呼びました。

 「お兄さん、お越しになったのですか。どうぞ家にあがってください」

 フンブは、足袋のまま飛び出してきて、ノルブを喜んで迎え入れました。

 部屋の中に入ってきたノルブは、きらきら輝く家財道具に目をまるくしました。

 「このタンスは私が持っていく。あれも、そしてあれも‥‥。」

 ノルブは、目にするものすべてに対して、

 「私がもっていく」

 と言いました。

 フンブは、にっこり笑いながら言いました。

 「お兄さんがお望みなら、すべてもっていってください」

 そう言われてはじめてノルブは腰をおろし、せきばらいをしました。そして、金持ちになったわけを聞きました。フンブは、これまであった出来事をくわしく聞かせてあげました。

 ノルブは、いくつもの包みを頭にのせたり、背中に背負ったりして、ふらふらしながら家に帰ってきました。そして、妻に、「足が折れたつばめを探せ」と、いきなり大声で怒鳴りつけました。

 ノルブの妻はわけも分からないまま、ぶつぶつ言いながら、軒下のつばめの巣を調べてみました。しかし、足の折れたつばめは一羽もいませんでした。

 すると、ノルブは、

 「しかたない。つばめのひなをつかまえて足を折るしか‥‥」

 と言って、はしごをかけて上がっていき、一羽のひなをつかまえました。そして、そのひなの足をぽきっと折ったのち、気の毒そうに言いました。

 「おやおや、足が折れているなあ。私がなおしてあげるから心配するな」

 ノルブは、薬と絹糸を持ってこさせ、折れたひなの足を治療してあげました。

 暑い夏が去り、すずしい秋になると、つばめたちは暖かい南の国に旅立っていきました。ノルブは、つばめたちの後ろ姿に向かってさけびました。

 「つばめたちよ、フクベの種、ひとつだけもってきておくれー!」

 ついに、ノルブがゆびおり数えて待ちに待った春になりました。ノルブは、毎日、家の庭をうろうろしながら、つばめたちが姿を見せることばかり待っていました。

 そのようなある日、絹糸で足を縛ったつばめが現れ、フクベの種一粒を落としました。ノルブは、喜びの声をあげ、その種を土に植え、熱心に育てました。

 ノルブが植えたフクベの種も、芽を出し、すくすくと育ちました。そして、その年の秋、瓦屋根の上に、三つの大きなフクベが生りました。ノルブは、妻と一緒に、いちばん大きなフクベから割ることにしました。

 「金銀の宝物が出てきてもよいし、米のかますが出てきてもよいな」

 ノルブとノルブの妻は歌を歌いながら、のこぎりで夢中になってフクベを切りました。

 「のこぎりで切ろう、のこぎりで切ろう」

 しばらくして、「ばあん」という音と共に、あらあらしい鬼が出てきました。

 「やい、こいつ、ノルブよ、善良な弟を追い出すだけでもあきたらず、なんともないつばめの足をわざと折って金持ちになろうとしたな。おまえは大きな罰を受けるのが当然だ!」

 そして、持っていたこんぼうで、ノルブとノルブの妻を容赦なくたたいて、はげしくしかりました。

 「ああ、私たちが間違っていました。どうかお許しください」

 ノルブとノルブの妻は、手を合わせて許しをこいました。すると、鬼は、またたく間に消えていなくなってしまいました。

 ノルブは、ふたつめのフクベを割りました。今度は、盗賊たちが現れて、家の中にある家財道具を一つ残らず、すべて持っていってしまいました。

 ノルブは気を取り直して、最後のフクベを割りました。すると、今度は、こわい顔をした大きな男たちが現れ、大きな瓦屋根の家をあっという間にこわしてしまいました。

 無一文のこじきになったノルブとノルブの妻は、地面をたたいて大声をあげて泣きました。

 「ああ、ああ。これはどうしたことか。ああ、ああ、もうおしまいだ、もうおしまいだ」

 そして、これまでの過ちをくいあらため、フンブの家に訪ねていきました。

 「お兄さん、お姉さん。よくいらっしゃいました。私たちの家で一緒に暮らしましょう」

 フンブは、ノルブの家族をあたたかく迎え入れました。そして、仲よく、いつまでも暮らしたそうです。

 

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