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2014年04月23日

【韓国昔話20】アビオミダブツ

【韓国昔話20】アビオミダブツ

 昔、アーさんとオーさんという人が、同じ日の、同じ時間に死にました。

 アーさんとオーさんは、後になったり先になったりしながら、あの世への道を歩いていきました。

 ところで、アーさんが歩いていると、先ほどから、オーさんが何かをつぶやいている声が聞こえてきました。

 「何をつぶやいているのですか」

 アーさんが気になってたずねました。

 「極楽に行くために、念仏をとなえているのさ。南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏」

 極楽に行くという言葉を聞いて、アーさんは、自分もそれをとなえたいと思い、

 「私にも、その念仏というものを少し教えてくださいませんか」

 と心からお願いしました。すると、オーさんは、しかたなく、

「南無阿弥陀仏をとなえなさい」

 と教えてあげました。

 「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ」

 アーさんは、一生懸命、念仏をとなえながら、オーさんの後ろについていきました。

 ところが、溝を飛び越えた瞬間、アーさんは、今までとなえていた念仏をうっかり忘れてしまいました。

 「もしもし、もう一度、教えてください。溝を飛び越えた時にうっかり忘れてしまいました」

 アーさんは、オーさんの背中に向かってお願いしました。しかし、先を歩いていたオーさんは、わざと聞こえないふりをしました。

 「アビオミダブツだったかな?」

 しかたなく、アーさんは、思いつくままにとなえながら道を歩きました。

 「アビオミダブツ、アビオミダブツ」

 アーさんがとなえる念仏の声を聞いて、オーさんは、鼻でせせら笑いました。

 間もなく、二人は、あの世へ到着し、閻魔大王の前に立ちました。

 閻魔大王は、二人にたずねました。

 「おまえたちは、あの世への道を歩いてくる時、どのようにして歩いてきたか」

 オーさんが、先に答えました。

 「私は、極楽に行くために、南無阿弥陀仏を一生懸命となえながら来ました」

 そのあと、アーさんが、大きな罪でも犯したかのように言いました。

 「私は、途中で念仏をうっかり忘れてしまい、アビオミダブツと言いながらついてきました」

 すると、閻魔大王が雷のような声で言いました。

 「念仏を間違ってとなえたことは罪にならない。しかし、一人だけ極楽に行こうと思って、教えてあげなかったことは罪になる」

 閻魔大王は、アーさんを極楽に送りました。しかし、オーさんは地獄に送りました。極楽に送るとき、閻魔大王がアーさんに言いました。

 「今度は、念仏をまともにとなえてみなさい」

 アーさんはとなえました。

 「アビオミダブツ、アビオミダブツ」

 アーさんは、念仏を忘れて、またそのようにとなえたそうです。

※アビ‥‥韓国語で、父親をひくめて言う言葉。父ちゃん。

※オミ‥‥韓国語で、母親をひくめて言う言葉。母ちゃん。

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