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青少年事情と教育を考える 301
公立学校での祈祷はどうなるか(米国)

ナビゲーター:中田 孝誠

 米国のトランプ政権は、信仰局や宗教の自由委員会を設立し、宗教の自由を守る姿勢を強く打ち出しています。

 宗教の自由委員会の会合に出席したトランプ大統領は、公立学校で信教の自由が重大な脅威にさらされていると述べ、祈る権利を保障する新たな指針を教育省が策定すると発表しました。
 学校において祈りの自由を擁護するというわけです(『世界日報』911日)。

 米国では、学校における宗教行為は長く議論を呼んできました。

 大きな転換点になったのが、1962年、ウォーレンコートと呼ばれた当時の連邦最高裁判所が学校における祈祷を禁止する判断を下したことです。
 これはニューヨーク州の公立学校で行われていた朝の行事に対するものでした。

 翌63年には、聖書朗読を禁止する判断を下します。こちらは公立学校での朗読を定めていたペンシルベニア州の州法に対する判断です。

 連邦最高裁がこうした判断を下したのは、修正憲法第一条で、国教を樹立したり、信教上の自由な行為を禁止する法律を制定したりしてはならないと定めているためです。

 ただ、州レベルでは近年、新しい動きが起きています。
 例えばテキサス州では、学校にモーゼの十戒の掲示を義務化する法案が可決しました。
 他の複数の州でも同様の法案が出されています。また、公立学校で聖書教育を実施する方針を打ち出す州もあります。

 こうした州レベルの動きを促すきっかけになったといわれるのが、ワシントン州の公立高校でアメリカンフットボールのコーチをしていたジョー・ケネディさんという男性の行動です。

 ケネディさんは試合が終わると毎回グラウンドで祈祷していました。
 しばらくすると生徒たちも少しずつ祈祷に加わり、最後は大半の生徒がコーチと一緒に祈祷をささげるようになったのです。しかも生徒たちは強制されたわけではなく、自主的に参加しました。これが7年間続きました。

 これを問題視した教育委員会からケネディさんは停職処分を受けてしまいますが、連邦最高裁はケネディさんの行為は修正憲法第一条に保障された信教の自由と言論の自由で保障されていて、違法ではないというケネディさん側の逆転勝訴の判決を下しました。

 このように、公立学校での宗教行為は政教分離の観点からも賛否の議論が続いています。
 一方で、国内の宗教離れや道徳心の低下、さらには宗教と道徳のない自由がさまざまな問題を引き起こしているとの懸念の声もあります。

 政教分離の解釈やモラル教育の観点から、学校での宗教行為、祈祷の自由が今後どうなるか。さらに議論が深まることを期待したいものです。