2025.08.29 17:00

青少年事情と教育を考える 300
豊明市のスマホ条例、「家族で守るルール作り」
ナビゲーター:中田 孝誠
愛知県豊明市のスマートフォンに関する条例案が注目を集めています(この原稿を書いている8月27日時点ではまだ成立はしていません)。
条例案の正式名称は「豊明市スマートフォン等の適正使用の推進に関する条例」(案)です。
この案が注目されたのは、「1日あたりの使用時間は2時間以内」として、小学生以下は午後9時以降、中学生以上は午後10時以降は使用を控える、と提示したからです。ただし罰則はありません。

同市のホームページで小浮正典市長は、スマートフォンの使用時間について、仕事や学習以外の余暇時間での使用を「1日あたり2時間以内」という目安を示し、「市、保護者、学校等及び専門職等が連携して促す」としています。
そして、条例案は市民の権利を制限したり義務を課すものではなく、あくまでスマートフォン等の過剰使用による悪影響への対策であり、「特に家族が同居している方にはぜひ、家族間で使用時間や使用時間帯についてルール作りをしていただきたいと願っています」と述べています。
スマホやゲームについては、通常は子供を対象にすることが多いですが、豊明市の条例案は「子どもだけでなく、保護者も含めた各自の目安となる使用時間や時間帯等」のルールを保護者も決めるよう促しているのが特徴です。
子供に言う前に、親自身がルールを守る姿勢を示すべきというわけです。
前回紹介した「全国学力・学習状況調査」(文部科学省)の分析では、スマホのルールを守るよう促す保護者の子供の方がゲームやスマホの時間が短く、保護者のゲーム・スマホの時間が長いほど子供のゲーム・スマホの時間が長く、勉強の時間が短くなるという傾向がありました。
スマホやSNS、ゲームの長時間使用は、子供たちの健康問題などにつながっています。
それを改善するには、子供にルールを守るよう促すだけでなく、親子で共に取り組む必要があるということでしょう。
ちなみに、豊明市の条例案に類似した条例はまだ少ないですが、例えば香川県に「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」(2020年4月)があります。
コンピューターゲームは1日60分、スマホの使用時間は中3以下(義務教育終了前)は午後9時まで、それ以外は午後10時までを目安にし、保護者は子供がルールを守り、規則正しい生活習慣を身につけられるよう努めると定めています。
ゲームの使用時間や依存防止については、北海道日高町の「生きる力を育む早寝早起き朝ごはん運動の推進に関する条例」、京都市の「子どもを共に育む京都市民憲章の実践の推進に関する条例」、長崎県の「子育て条例」で、おのおのの一部にゲームの時間やゲーム依存の弊害に関する内容を取り入れています(一般財団法人地方自治研究機構ホームページ)。
いずれにしても、今回の条例案は一つの問題提起の意味があるといっていいのではないでしょうか。