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シリーズ・「宗教」を読み解く 376
ユダヤ・キリスト教の歴史に見る母なる者の使命⑧
幼少期のイエスと母マリア

ナビゲーター:石丸 志信

 「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された。独り子を信じる者が一人も滅びないで、永遠の命を得るためである」(ヨハネによる福音書 第316節、新共同訳)

 福音史家が証ししたところによれば、神の独り子は、母マリアを通して確かにこの世に来られた。
 人類の救い主、世を照らす光であるかたが来られたので、「真理を行う者」は光のもとに集い、光のうちに歩むことを神が願っている。

 では、母となったマリアは神の独り子イエスに対してどのように接し、どのように支え守ったのだろうか。

 マリアが常にイエスのことを気遣い、イエスに寄り添い、神から示されたイエスの行く道を整えたのかといえば、それは定かではない。
 福音書のいずれにもイエスと母マリアとのエピソードはほとんど描かれておらず、一つ二つ出てくる内容も全幅の信頼を持ってイエスを支えているとは言い難いものであった。

 ルカによる福音書だけが12歳になったイエスが過越祭の折、両親と共にナザレからエルサレム巡礼に加わったことが記されている。
 この時、巡礼を終えた両親はイエスを残して帰路に就き、後でイエスがいないことに気付き慌てて探しに戻ると、神殿の境内で学者たちと議論を重ねている独り子がいた。

 その時マリアは、「なぜこんなことをしてくれたのです」(ルカによる福音書 第248節、新共同訳)と叱責とも取れる言葉を投げかけている。
 少年といえども12歳ともなればイスラエル選民として一人前に扱われてよい年齢になっている。律法を巡って議論に加わることも許される。
 それに加えて、すでにイエスは創造主なる神が父だと明確に知っていた。

 しかしマリアは、「わたしが自分の父の家にいるのは当たり前だということを、知らなかったのですか」(同 第249節、新共同訳)と返すイエスの言葉を理解できなかった。

 マリアはみ使いから自らを通して生まれてくるかたがいかなるかたかを知らされていた。
 誕生の後、神殿に幼子を奉献した時も、老シメオン、女預言者アンナから出るメッセージを聞き、心に留めていたという。

 しかしイエスが成長するまで、母マリアは彼をどのように守り育ててきたのか、その詳細について、ルカといえどもマリアからの証言が得られなかったのか、福音書には何も記されていない。
 イスラエル民族の中で選ばれた母マリアのこの世における苦悩と葛藤は背後に隠されている。

 福音書の主要な物語は、イエスが30歳ほどの年齢になってから、突然、洗礼ヨハネのもとに現れたこと、そしてその後の公生涯における彼の言葉と行いを映したものとなっている。

 残念ながら、神の独り子がどのように成長していくのか、家庭の中で、共同体の中でどのように育まれていくのかを、福音書からは明確に読み取ることはできない。



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