2025.07.22 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 374
ユダヤ・キリスト教の歴史に見る母なる者の使命⑥
ユダの山里にて
ナビゲーター:石丸 志信
マリアがナザレからはるばるユダの山里を訪ねた時、迎えたエリザベト(エリザベツ)は聖霊に満たされて、声高らかに賛美している。
「あなたは女の中で祝福された方です。胎内のお子さまも祝福されています。わたしの主のお母さまがわたしのところに来てくださるとは、どういうわけでしょう。あなたの挨拶のお声をわたしが耳にしたとき、胎内の子は喜んでおどりました。主がおっしゃったことは必ず実現すると信じた方は、なんと幸いでしょう。」(ルカによる福音書 第1章42~45節、新共同訳)
これに応えてマリアは主を賛美して歌います。
「わたしの魂は主をあがめ、わたしの霊は救い主である神を喜びたたえます。身分の低い、この主のはしためにも目を留めてくださったからです。今から後、いつの世の人もわたしを幸いな者と言うでしょう、力ある方が、わたしに偉大なことをなさいましたから。」(同 第1章 46~49節、新共同訳)
み使いが同時期に現れ、彼女らを通して起こる神の御業(みわざ)を伝えた。
それを信じた二人が出会った時に起こった感動を表す賛歌が聖書に記され、今日まで歌いつがれてきた。
カトリック教会で主要な祈りの一つになっている「アベ・マリアの祈り(天使祝詞)」は、エリザベトの、母マリアを迎える言葉をわれらの祈りとして取り入れている。
以前、筆者がイスラエル巡礼をした時、ユダの山里のザカリヤ家庭が住んでいたといわれるエイン・カリムに案内されたことがある。
洗礼ヨハネの生家。幼い頃ここで祭司ザカリヤと母エリザベトと共に過ごしたことだろう。
その傍らに立つ、母マリアの訪問を記念する聖堂の庭を囲む塀には、「マリアの賛歌」が40数カ国の言語で刻まれていた。
その時ふと気付いたのは、ここが聖都エルサレムの西郊外にあり、ベツレヘムとはさほど遠い距離にはないということだ。
洗礼ヨハネが誕生した時にはマリアはすでにザカリヤ家庭を離れていた。
それから数カ月後、臨月を迎えたマリアはヨセフに連れられベツレヘムまで旅をしてくることになる。
人口調査で人々が出生地に戻って登録をするというので、彼らはベツレヘムにまともな宿を得られなかったという。
その時、マリアにとって親しいはずの親戚がほんのわずかの距離の所に住んでいたのに、どうして彼らを頼らなかったのかという疑問がふと湧いてきた。
福音書には書き表せなかった何かの事情で、マリアはエリザベトを頼ることができなかった。ヨセフはあえてザカリヤ家を頼ることをしなかった、と見ざるを得ないのである。
マリアとエリザベト、イエスの誕生を巡る二人の母が、最後まで心一つにして神の独り子に信頼を寄せ、彼を守り彼に従ったのかというと疑問が残るところだ。
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