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シリーズ・「宗教」を読み解く 367
母なるものを慕い求めて⑪
聖女の伝統~イエスの渇きの発見

ナビゲーター:石丸 志信

 4歳の時に母を亡くしたテレーズにとって、その後の10年間は最も苦しい時期だった。幼くして愛情深い母を失った悲しみは、快活な少女を内気で感受性の強い女の子に変えた。
 だが沈黙のうちに神に顔を向けていくことで、天の父の静かな呼びかけがあることに気付くようになる。

 「もし神様がご自分の小さな花に恵み豊かな光を惜しみなく注いでくださらなかったならば、この花はとてもこの地上に慣れることはできなかったでしょう。…試練の雪の下にさえ、こうしたお恵みに欠けることはありませんでした。(自叙伝45)」(『テレーズ~その生涯における苦しみと祈り』フランシス・ホーガン著 山口カルメル会訳 女子パウロ会、44ページ)

 自らを小さき花と呼ぶテレーズは10歳の時、極度の体調不良を覚え、耐え難い状況に陥った。
 姉たちの祈りに支えられ、聖霊降臨祭の日に祈る中で聖母像がほほ笑むのを見てすっかり癒やされていく。

 テレーズはその年、初めて聖体拝領を受けた時に、イエスの魂との深い一致を体験する。

 1886年のクリスマス、まだ14歳に満たなかったテレーズは、罪人(つみびと)の回心のために働きたいという大きな望みが内から湧き起こる。
 続いて十字架を見つめて祈る時、イエスの血がその手からしたたり落ちるのが見え、そのもとに駆け寄る者が誰もいないことに心を痛める。そして「私は渇く」という声を聴く。

▲カルメル会修道院でのテレーズ

 リジューのカルメル会修道院への入会が許され、修道生活を始めたテレーズは、イエスの渇きを潤すことに専心するようになる。
 しかし彼女を待ち受けていたのは、過酷な「無味乾燥」という霊的試練だった。

 真っ暗な洞窟に突き落とされたような孤独の中でも、彼女はほほ笑みを絶やさなかった。
 テレーズは誰よりもへり下り、奉仕に徹した。修道院の仲間たちには何の心配事もない明るい姉妹に見えていた。

 彼女は試練を経ながらイエスの渇きへの理解を深め、その癒やしのために祈った。特に神の召命を受けた司祭、神学生のために祈った。
 テレーズは海外宣教にも志願したいとの希望を抱いていた。しかし結核に侵され、10年に満たない修道生活の後、その魂を天に返すことになる。

 テレーズは死の一年前にこのような詩を修道院長にささげている。

 「イエス 私の愛するただ一人のかた カルワリオの夕べごとに あなたに花びらを撒くのが 私のかぎりない喜び! 春のバラをむしりながら 私はあなたの涙を拭いたい…」(『テレーズの祈り』伊従信子編 聖母の騎士社、20ページ)

 死が近づいた時、テレーズはまた、一つの詩を記した。

 「むしられたバラは 気取らずに与える 自分が無になるまで
 わたしもこのバラのように よろこんで この身をあなたに委ねます 幼きイエスよ…
 私は自分を むしり取りながら あなたに愛を証しする…」(3839ページ)



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