2025.05.20 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 365
母なるものを慕い求めて⑨
聖女の伝統~聖マルガリタ・マリア・アラコク
ナビゲーター:石丸 志信
キリスト教霊性の歴史を見ると、修道制の流れの中に聖母マリアから始まる聖女たちの特別な営みが息づいていることが分かる。
17世紀の半ば、フランスにマルガリタ・マリア・アラコク(1647~1690)という乙女が生まれた。
マルガリタは幼い頃から信仰深い娘で、修道生活に憧れ貞潔を守りながら生活していた。
マルガリタが24歳を迎える年、初めてパレ・ル・モニアルの聖母訪問会の修道院を訪れた時、心の内に「私が、あなたに望むところは、これです」という主イエス・キリストの声が響いてきた。そこで彼女はこの修道会への入会を決意した。
聖女の伝統に立つこの乙女、聖マルガリタは、イエスを愛するが故に「苦しみのイエスに一致して、苦しみを感じたい」(『聖マルガリタ・マリア自叙伝』鳥舞峻訳 聖母の騎士社、40ページ)との思いを抱き、修道生活を続ける中で「イエスの聖心(みこころ)の啓示」が与えられることになる。
もちろんそこに至るまで、彼女は切実に求めて祈る時間があった。
イエスも簡単には啓示することができなかった。そのような苦痛を示すことは無理だと何度も断られることもあったのだ。その上でついにイエスがその心を開いた。
聖マルガリタが幻に見たものは、剣で刺し貫かれいばらの冠を押しかぶせられ、十字架を打ち立てられたイエスの心臓だった。
そのビジョンを通して、受難と死によって傷ついたイエスの聖心を知った。
さらに、聖痕といわれる、イエスが両手両足に受けたくぎ跡を自身の手足に受け、肉体的苦痛を伴う主イエスの苦しみを実際に味わった。
そして最後にイエスは彼女にこう告げたという。
「ああ、この私の心は、これほど人々を愛し続けてきました。それは、涸渇するに至るまで何も惜しまないほど、そしてこの愛を人々に証しするため、自らを使い果たして、惜しまないほど愛し続けました。そしてその感謝の代わりに、私は大多数の人々から忘恩しか受け取りません。それは、愛の秘跡の中にいるこの私に対して保っている不敬な態度、冒瀆、冷淡さ、軽視によってです」(同、217~218ページ)
イエスの花嫁の心を尋ね求めた女性の経験した特別な神秘体験は、当初は人々には理解されず、多くの反対や迫害を受けざるを得なかった。
それにもかかわらず、イエスの聖心への信心は次第に世界に広がり、1856年には全カトリック教会で「聖心の祝日」として祝われるようになった。
そして神の愛に対する人間の忘恩、人々に対する冷淡さを悔い改め、イエスの愛に倣おうとする祈りが深められるようになる。
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