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青少年事情と教育を考える 292
高校生の6割「将来、親になりたい」

ナビゲーター:中田 孝誠

 「神はどこにでもいるわけにはいかない。ゆえに母たちをつくった」

 ヨーロッパにこういう格言があるそうです(東京新聞5月11日付)。調べてみると、ユダヤの格言と紹介しているウェブサイトもありました。

 昔から、子供に対する母の愛は無償の愛ともいわれます。それはまさに神の愛につながるものなのかもしれません。心に響く言葉です。

 では、若い世代の「親になる」ことへの意識はどうなっているのでしょうか。

 例えば、生命保険文化センターが2021年度、高校1年生と2年生を対象に行った調査(「高校生の消費生活と生活設計に関するアンケート調査」)によると、「将来親になりたい」と答えた生徒は61.0%(男子56.9%、女子64.5%)、「なりたくない」が9.7%でした。

 なりたい理由で多かったのは「子どもがいたら楽しそう」「子どもが好きだから」、「子孫を残したいから」です。6割の高校生は親になることを思い描いているわけです。ただ、この割合は減少傾向にあります。

 一方、「親になりたくない」理由は「面倒だから」「金銭的余裕がなくなる」でした。

 また、国立社会保障・人口問題研究所が実施した「第16回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」(2021年6月実施)では、夫婦に理想の子供数を聞くと半数以上が「2人」と答えます。

 子供を持ちたい理由を聞くと、最も多いのが「子どもがいると生活が楽しく心が豊かになるから」という回答でした。

 この連載でも何度か書きましたが、ここ数年、女性たちは母でいることをつらいと感じている、理想の母親像が女性に押し付けられている、といった声があります。

 仕事と家庭の両立、児童虐待などの問題もあり、理想だけを言えない社会状況にあることは確かです。
 そうしたことを考えれば、孤立育児など悩みを抱える母親たちを社会全体で支えていく必要があるでしょう。

 その一方、子供が欲しいと思っていなかったのに実際に子供ができて喜びを感じている、といった意見もネットなどで目にするようになってきています。

 やはり現代は“母”(あるいは“父母”)をどう考えるかが大きなテーマだといえそうです。それが子供の幸福にもつながるのではないでしょうか。