https://www.kogensha.jp/news_app/detail.php?id=22576

青少年事情と教育を考える 257
過去最少の出生数と若者の未婚化

ナビゲーター:中田 孝誠

 昨年1年間の出生数は75万8631人で過去最少を更新したことが、厚生労働省の人口動態統計速報で公表されました。前年から約4万1千人の減少で、8年連続の減少となりました。

 また、婚姻件数は48万9281組で、こちらは前年から3万件余り減少し、戦後最小となっています。

 出生数は2016年に100万人を割り、一昨年には初めて80万人を割りました。わずか6年で20万人も出生数が減ったことになります。

 国立社会保障・人口問題研究所の将来人口の予測では、出生数が75万5千人になるのは2035年と推定されていました(昨年4月に公表された推計です)。コロナ禍が大きく影響しているとはいえ、少子化の速度が早まっていることがうかがえます。

 このような事態に、政府は今月、「子ども・子育て支援法」の改正案を閣議決定しました。
 児童手当や育児休業給付金、さらには少子化対策の財源となる「子ども・子育て支援金」(月に500円程度が徴収されるといわれています)が議論になっています。

 また、一部メディアでは、若者の未婚化や晩婚化の進行に対して、国や自治体による婚活支援の動きが広がっていることを紹介していました(NHKのニュース)。

 例えば、自治体が行う結婚支援の取り組みに国が交付金を出し、結婚支援センターの運営やマッチングシステムの運用、また若者向けのライフデザインセミナーなどを行っています。

 ただ、結婚支援センターやマッチングシステムなどの取り組みは課題も多く、効果については評価が分かれているようです。

 ちなみに、未婚化の風潮が広がる事態に、人口学が専門の加藤彰彦・明治大学教授が興味深い指摘をしています。

 加藤教授によると、未婚化が進んできた要因には二つあり、一つは経済成長の低下、もう一つは「個人主義イデオロギーの普及による共同体的結婚システムの弱体化」です。

 親族や地域社会、会社などの身近な共同体による配偶者選択の支援が大きな効果があったものの、1990年代以降に自己選択や自己決定のイデオロギーが浸透した影響で否定されたというわけです(「未婚化を推し進めてきた2つの力」2011年)。

 国や自治体が個人の価値観(結婚するかしないか)に踏み込むのは難しいのは確かですが、地域による「おせっかい」も必要なのかもしれません。