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シリーズ・「宗教」を読み解く 304
修道院の祈り 2
典礼聖歌は祈りの歌

ナビゲーター:石丸 志信

 カトリック教会で用いられている典礼聖歌の中にこんな歌があった。

 「父はいる 吐く息 吸う息のうちに父はいる 組む指 組めない指に 歌うのど 歌えぬのど おお どこにでも 父はいて 父はいて そのわざは一つ」

 ひと呼吸ひと呼吸、創造主なる神様の臨在を感じていたいという願いが込められている祈りの歌だ。
 こうした歌が出てくる背景には、パウロの勧めがある。

 パウロはテサロニケの教会にこう書き送っている。

 「いつも喜んでいなさい。絶えず祈りなさい。すべての事について、感謝しなさい。これが、キリスト・イエスにあって、神があなたがたに求めておられることである。御霊(みたま)を消してはいけない」(Ⅰテサロニケ5:16~19

 キリスト者の生活は、祈りと感謝に満ちたものであり、その中で聖霊の働きを体感し、神様の臨在を実感していくものだと教えている。

 使徒パウロの勧めを忠実に実行し、そのために生涯をささげる者が生まれてくる。
 都市生活から離れ、厳しい環境に自らを追い込み、祈りに徹する隠遁(いんとん)者。彼らの生活形態が、修道制の萌芽(ほうが)となり、中世キリスト教の歴史を導く伝統の根となっていく。

 東方の修道者たちが格闘の末に見いだした祈りが「イエスの御名の祈り」であった。
 呼吸に合わせて「主イエス・キリスト、憐(あわ)れんでください」と繰り返し祈るのだ。

 呼吸を整えて、口では主の名を呼ぶという短い言葉の繰り返しは、深い瞑想(めいそう)を促し、それによって神を見るといわれる。修道院で培われた祈りの伝統は、やがて一般信徒にも普及していく。

 西方典礼でも、ミサの中で「主よ、あわれみ給(たま)え」(キリエ・エレイソン)という祈りの言葉が必ず唱えられる。
 また、カトリック信者が日常用いる祈祷書には、「イエズスの聖名(みな)の連禱(れんとう)」が載せられていた。

 「主あわれみ給え。キリストあわれみ給え。主あわれみ給え。イエズスわれらの祈りを聴き給え。イエズスわれらの祈りを聴き容(い)れ給え」と始まり、「生ける天主の御子(おんこ)なるイエズス、われらをあわれみ給え。…」といった祈祷が続いていく。

 祈る者にとって、主の名を呼ぶことは、「イエスはキリストである」との信仰告白をすることであり、神のひとり子を迎えた喜びであり、そのかたを世に遣(つか)わしてくださった神への感謝でもある。
 神への呼びかけと応答を呼吸で感じながら、次第に回復されていく神と人との関係の妙味を味わうものであったのだろう。

【参照】
①典礼司教委員会・典礼聖歌編集部編『典礼聖歌(一般用)』(あかし書房、1980年)
②カトリック中央協議会編『公教会祈祷文』(中央出版社、昭和23年)



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