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青少年事情と教育を考える 251
虐待体験と少年非行

ナビゲーター:中田 孝誠

 法務省が今月公表した『犯罪白書』(令和5年版)に、「非行少年と生育環境」という特集が掲載されています。
 それを見ると、幼少期の虐待や家庭内暴力などの体験が後の少年非行に影響を与えていることを示唆しています。

 少年非行の背景として、保護者との関係や家庭の経済状況など生育環境の影響に注目して調査を行いました。
 対象は、2021年に少年院に入所していた13歳から19歳の少年591人、保護観察処分を受けた274人、そして保護者です。

 調査の中には、虐待や家庭内暴力といった小児期逆境体験(ACE)の項目があります。
 調査によると、「親が亡くなったり離婚したりした」が少年院入所者の60.6%、保護観察処分の少年では42.0%が経験したと回答しています。

 また、幼少期に「家族から殴る蹴るといった体の暴力を受けた」経験があるのは少年院に入所した子のうち61.0%、「家族から心が傷つくような言葉を言われるといった精神的な暴力を受けた」は43.8%に上ります。「母親が、父親から、暴力を受けていた」も34.8%でした。
 一方、保護観察処分の少年は、こうした虐待などの経験は20%以下です。

 この他、家庭内に心の病にかかっている人がいた、家族から十分に気にかけてもらえなかった、家庭内にアルコールの問題を抱えている人がいた、なども少年院入所者の2割近くの子供が経験していました。

 保護者自身も何らかの経験をしている人が少なくありません。
 「配偶者から暴力をふるわれた」が3割、「こどもに行き過ぎた体罰を与えた」が2割でした。

 ACEの研究は1990年代にアメリカで始まったものです。研究によると、虐待や暴言、育児放棄、両親(夫婦)のけんか、親のアルコール依存などが子供の心身の健康に重大な影響を与えるとされています。そしてこうした経験が大きなストレスとなり、脳の構造さえ変わってしまい、成人になって依存症などの問題行動や、心臓病やがん、精神疾患などの病気にかかる可能性が高まるというのです。

 今回の調査では、ACEに関係する項目に一つでも該当する少年院入所者は9割近く、保護観察処分の少年は6割でした。
 もちろん、上記のような経験をした少年全員が非行に走るというわけではありません。
 白書も「非行の背景として、逆境体験をはじめとする厳しい生育環境の存在が示唆された」と記しています。

 少なくとも、家庭が果たしてきた機能が弱くなっていることが問題につながりやすいことを示唆しているといえるでしょう。