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青少年事情と教育を考える 250
PISAの結果から見えるもの

ナビゲーター:中田 孝誠

 先日、「国際学習到達度調査(PISA)」の結果が公表されました。
 PISAは経済協力開発機構(OECD)が3年に1度実施している調査で、義務教育を修了した段階の15歳(日本では高校1年生)を対象に、学んだ知識や技能を実生活でどの程度活用できるかを測ります。
 「読解力」と「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の三分野があり、今回公表されたのは2022年の調査結果です。

 PISAの結果は、これまで毎回のように議論を呼んできました。特に2003年の調査では、「読解力」や「数学的リテラシー」で大幅に順位を下げ、「PISAショック」といわれたほどでした。

 今回の調査には、81カ国・地域の69万人が参加しています。
 その中で、OECD加盟国が2018年の前回より平均点を下げたのに対して、日本は三分野とも得点を伸ばしました。

 順位も「数学的リテラシー」が5位、「読解力」が3位、「科学的リテラシー」が2位で、いずれも世界トップレベルとなっています。低い得点層が減り、全体的に底上げされていることも特徴です。

 日本が伸びた要因として、新型コロナウイルスによる休校の期間が他国より短かったこと、学力面では現行の学習指導要領を踏まえた授業の改善が進んだこと、生徒たちがICT(情報通信技術)機器の使用に慣れたこと、などが挙げられています。文科省や学校現場の取り組みが一定の成果を上げたことは確かのようです。

 もう一つ、生徒たちへの質問調査を見ると、「学校への一員だと感じている」「他の生徒たちは私をよく思っている」などの回答が増え、日本の生徒たちは学校への所属感が高まったと評価されています。

 一方で、課題も指摘されています。
 例えば、今回読解力が向上した要因には、PISAを意識した国語の授業改革があります。ただ、図表やグラフなどを読み解く情報処理能力がウエートを高めたことで、評論や小説を読んでさまざまな意見や背景、人の心情を理解する力が落ちているという声が現場の先生から上がっているというのです(村上慎一・名古屋外国語大学教授、「教育新聞」12月11日付)。

 また、学校が休校になった場合に、自分から学習する自信がない生徒が多いという結果も出ています。この点はOECD平均を下回っていました。
 これについて文科省は「主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善の推進により…自立した学習者の育成に向けた取り組みを進めていく」としています。