青少年事情と教育を考える 249
愛着障害の子供たちと教師の支援

ナビゲーター:中田 孝誠

 愛着についてたびたび取り上げてきました。
 今回は「増加する愛着の問題を抱える子どもたち―どんな特徴があるのか、そして教員ができる支援とは」という興味深い記事(「教育新聞」2023年5月25日付)を紹介します。

 愛着は、乳幼児期に特定の他者(多くの場合は母親)との間に持つ情緒的な絆のことです。愛着関係を結ぶことで、子供は安心感と安全を確保して外の社会に向かうことができます。愛着障害は、そうした特定の人との絆が十分につくれず、困難を抱えている状態のことです。

 近年、愛着障害の子供が学校現場でも目立つといわれていて、筆者も以前知人の教師から話を聞いたことがあります。
 愛着障害に対する教師側の理解が十分でなかったために対応の仕方が分からず、人手不足もあって苦慮しているということでした。

 上記の記事では、愛着障害の子供の特徴と学校現場での支援について、米澤好史・和歌山大学教授が答えています。

 米澤教授によると、愛着障害の子供の特徴は「自己防衛機能」(「自分は一切悪くない」と言い張ったりする)や「愛情欲求行動」(誰かの物を隠したりして自分に注目を集める行動)などです。

 こうした子供たちへの支援としては、「自分が困っている時に誰かが守ってくれる」と気付けるようにすることや、「先生の方から先に『こうしようか』と言ってくれる、先手の支援」、また「これをやったら、こんないい気持ちになったね」と感情の確認をすることなどが大切だと米澤教授はアドバイスしています。

 その上で、教師の多忙な状況を理解しつつ、その子の「特定の人」として、少しでも会話して関係性をつくってほしいと述べています。
 もちろん、愛着障害の対応で最も重要なのは家庭への支援、親が子供との関係性を改善するための支援です。

 それと共に、子供たちが成長して思春期に入る時期、学校で過ごす時期にも、愛着に注目した支援が必要だということでしょう。

 以前紹介した『思春期の子どもと親の関係性』(小野善郎著)では、思春期は親とのつながりの質が身体的なものから心理的なものへ変化することもあって、学校や地域でも愛着の土台を作ることが大切だと述べられていました。
 愛着は、家庭内の親子関係が中心ですが、それにとどまらない、社会的に考えるべき課題だというわけです。