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青少年事情と教育を考える 248
大学生への大麻のまん延と青少年のオーバードーズ

ナビゲーター:中田 孝誠

 このところ、若い世代の薬物問題がクローズアップされています。
 一つは、大学の運動部の学生に大麻が広がっていたことです。大学スポーツ選手への大麻のまん延は3年ほど前にもニュースになりましたが、再び同じようなことが起こったわけです。

 大学生に限らず、大麻は若い世代に急速に広がっています。
 警察庁のまとめによると、昨年(2022年)、大麻取締法違反で検挙された20歳未満の少年少女は912人で、前年から8.2%減少しました。それでも2013年(59人)から約10年間で15倍に増えています。

 もう一つ、薬物に関して問題になっているのが若者の「オーバードーズ」(薬の過剰摂取)です。こちらは違法薬物ではなく、市販薬による問題です。

 先日、多くの若者が集まる東京・歌舞伎町の映画館周辺(トー横)で市販薬を無許可で販売していた容疑者が逮捕されました。
 普通の薬局で購入できる風邪薬などを大量に服用し続けると、一時的に気持ちが高まり嫌なことを忘れられますが、依存状態になって止められなくなります。最悪の場合は死亡することもあります。
 米国など海外では、以前から薬の過剰摂取による死亡の増加が大きな問題になっています。

 日本の高校生を対象にした調査によると、市販薬を乱用した経験があるという割合は1.57%(推計値)に上っています(「薬物使用と生活に関する全国高校生調査2021」国立精神・神経医療研究センター)。
 オーバードーズで専門機関に相談した人の年齢層も、20歳未満が4割を超えています(厚生労働省資料)。

 違法薬物の場合は「軽い気持ち」「興味本位」といった動機で手を出すことが多いのに対して、オーバードーズの背景には家庭や学校などで感じている「つらい気持ち」、いじめや虐待などの問題があるといわれています(東京都保険医療局「市販薬のオーバードーズ(過剰摂取)について」)。

 前述の高校生調査では、市販薬乱用の経験がある高校生の特徴として、学校生活では「学校が楽しくない、親しく遊べる友人や相談ができる友人がいない」、家庭生活では「親に相談できない、大人不在で過ごす時間が長い、家族との夕食頻度が少ない」などが挙げられています。

 若者たちが幸福感、自己肯定感を得られる、あるいは「誰かに支えられている」「愛されている」実感を持てるようにすることが、薬物問題の解決に必要だといえるのではないでしょうか。