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青少年事情と教育を考える 233
高校生のキャリア教育と体験

ナビゲーター:中田 孝誠

 学校現場では、将来の進路と職業選択につながる「キャリア教育」の推進が重要視されています。
 そうしたキャリア教育に関わる国際比較調査の結果が6月に公表されました。
 「高校生の進路と職業意識に関する調査」で、日本と米国、中国、韓国の高校生を対象に調査しました。
 ここでは主に二つの点を取り上げたいと思います。

 一つは、将来の進学や職業につながる学習は活発になっている一方、体験の機会が少ないということです。
 職業の種類や内容、進学したい学校について調べたり、学ぶことや働くことの意義について学習したりしたという日本の高校生は約7〜8割で、他の3カ国と比較しても高い割合です。

 その一方、「職場の見学」や「就業体験」といった現場に出かけての体験は12.3%と7.4%にとどまり、他国(20〜40%)より低くなっています。

 もう一つは、ボランティア活動についてです。

 ボランティア活動に取り組んでいるという回答は、アメリカと中国の高校生が49%、韓国34%に対して、日本は17%でした。ボランティアに関心があると答えた生徒は49%でしたが、実際の行動に結び付いていなかったわけです。
 日本の高校生の体験活動が少ないことについて調査報告書は、商工会議所をはじめ企業団体や地域コーディネーター、地域の高等教育機関などが積極的な役割を果たす必要があると分析しています。

 例えば韓国では、家庭や地域と密接に連携して進路教育が展開されているのが特徴だと紹介しています。
 地域の教育庁で保護者が研修を受けて「進路コーチ」として進路相談や体験活動に関わったり、自治体が「進路体験支援センター」を設置したりと、豊富な体験プログラムを提供しています。

 ボランティア活動についても、報告書は「生涯を通して社会の創造に貢献できる市民を育成する」教育的意義があると指摘しています。
 日本と他国のボランティア学習に対する捉え方の違いが数字に表れているようです。