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青少年事情と教育を考える 234
若者の孤独と自己肯定感

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回、『高校生の進路と職業意識に関する調査』(日本、米国、中国、韓国の高校生を対象に調査。国立青少年教育振興機構)を取り上げ、学校でキャリア教育が行われている一方、日本の高校生は「職場の見学」や「就業体験」といった現場での体験の機会が少ないことを紹介しました。

 今回はもう一つ、別の観点から考えてみたいと思います。
 上記の調査では、例えば「自分はダメな人間だと思うことがある」は78.6%(「とてもそう思う」「まあそう思う」の合計)に上り、他の3カ国(50〜60%)に比べて最も高くなっています。「今の自分が好きだ」は54.4%、他は70%前後でした。また、「自分の将来に不安を感じている」も日本の高校生は79.3%で、他国の60%前後を上回っています。

 このように日本の若者の自己肯定感が他国に比べて低いことは以前から指摘されていました。理由として、国民性や文化の違いによるところも大きいとされています。
 気になる点もあります。先日初公判が開かれた小田急線での死傷事件のように、ここ数年、若者の孤独感が大きな要因と見られる事件が目立っていることです。

 過去の同様の調査を比較すると、日本は「自分はダメな人間だと思うことがある」は2014年の調査では72.5%、2018年は80.8%でした。今回は若干改善していますが、8年前より7ポイント余り上昇しています。
 もちろん、孤独感を持つ若者が全て犯罪に走るということではありません。ただ、若者たちが孤独感を改善し、より生きがいを感じられるようにするためにどうすればいいのか、社会全体で考える必要があるはずです。

 本欄でも以前紹介した内閣府の『人々のつながりに関する基礎調査』(昨年4月、16歳以上の男女約1万1千人)で、孤独感が「しばしばある・常にある」、「時々ある」という回答は、16~19歳は3.4%と12.7%、20代(20~29歳)は7.7%と18.6%、そして30代(30~39歳)でも7.9%と16.6%でした。20〜30代の一定数が常に孤独感を抱いていることがうかがえます。

 内閣府の調査からは、孤独感を感じる要因として「未婚」「同居人、または不安や悩みを相談する相手がいない」「地域社会との交流がない」といった点が挙げられます。
 つまり、若者の孤独感の改善には、結婚や家族の存在、地域コミュニティーが大切だというわけです。

 一方、今回の高校生調査を分析した筑波大学助教の京免徹雄氏は、学校教育の観点から自己肯定感の向上に良い影響があることとして、「好きな授業がある」「自分のことを理解し、話しかけたり励ましたりしてくれる友人がいる」、さらに「教師が生徒を直接支援するだけでなく、生徒の周囲に間接的に働きかけ、その人間関係を豊かなものにしていくこと」が有効だと指摘しています。