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平和の大道 36
英仏海峡トンネルの教訓

 皆さんは、『平和の大道』という書籍をご存じでしょうか。著者は、一般財団法人国際ハイウェイ財団の理事長、佐藤博文氏です。
 同書は、国際ハイウェイ財団が推進する「国際ハイウェイ・日韓トンネル」プロジェクトの意義や背景などについて総合的に理解することのできる貴重な一冊です。
 Blessed Lifeではその一部を抜粋して紹介してまいります。ぜひお楽しみに!

佐藤 博文・著

(『平和の大道-国際ハイウェイ・日韓トンネル-』より)

ヨーロッパ統合を背景に実現

 1990年末に本坑が貫通し、94年に営業開始した英仏海峡トンネルは、200年前のナポレオンの時代から構想されていたものであるが、主にイギリス側が、防衛上の理由で反対していた。ナポレオンがトンネルを走り抜けて一気にイギリスを攻める考えがなかったとは言えないので、その心配も当然であろう。73年にはヒース英首相とポンピドー仏大統領との間で協定が調印され、工事も開始されたが、この時も途中で挫折した。主な理由は国の財政が許さなくなったからである。

 しかし、84年に再びサッチャー英首相とミッテラン仏大統領との間に合意が成立し、86年に条約が締結され、87年から工事が開始された。その背景に、ヨーロッパ統合の大きなうねりがあったことは言うまでもない。

 イギリスとヨーロッパ大陸を隔てているドーバー海峡は、最も浅いところで幅が40km、水深は60mと比較的浅く、地層にも恵まれている。チョークマールというチョークと同じような石灰岩層の安定した地層で、しかも透水性が低いので、海底トンネルを掘るには理想的である。長年の調査によって、このチョークマール層が海峡に連続していることが分かったので、トンネルは忠実にその中を通過するように設計、施工された。そのため少し勾配を変えたり、曲線を入れたりしたが、結果的に非常に短い期間で掘削が終わったのである。

 ここに、全長50.49km、海底部長37.9km、水深(最大)60m、単線鉄道トンネル2本・直径7.6m、サービストンネル(保守管理、非常時脱出用)1本:直径4.8m、掘削方法:TBM、シールド工法、建設費用:約18000億円の英仏海峡トンネルが完成した。

 英仏海峡トンネルの開通により、トンネル通過時間が40分になり、ロンドン―パリ間は4時間以内で結ばれるようになった。工事費はすべて民間資金で賄われ、日本の銀行団も大きな投資をしている。その上、青函トンネルで格段に進歩したトンネル掘削技術が投入され、良好な地層を、短期間の内に掘り抜いた。

英仏海峡トンネルの破綻とその教訓

 鳴り物入りで華々しくスタートした英仏海峡トンネルであったが、事業費が当予算よりも約50%以上増加して資金繰りが悪化し、利払いを借入金で賄うが、さらに利払いが増える悪循環に陥った。そして2006年にパリ商事裁判所に破綻法に準じた保護を申請し、運営会社のユーロトンネル社は破綻した。

 旅客シャトルやトラックシャトルなどの高速鉄道を運行し、その通行料等から利益を得ていたが、旅客数は最初に予想した3分の1でしかなかった。建設費等の負債にかかる利息の支払いを列車の通行料だけで対処することはできなかったのだ。

 破綻の原因は、交通量過大予測(実際は需要予測を下回る交通量)、過大営業収入予測、銀行融資誘導のための経済予測等の問題が指摘されている。具体的には、計画予算と実施事業の乖離・掘削経費増(59%増)、設計変更によるコスト増、安全規制強化に伴う車両コスト増(188%増)、資金調達費(総事業費の45%)、営業開始時期の遅れ、火災事故発生等、最終的に建設費は70%増、事業費は75%増(インフレ相当分除く)となった。

 さらに資金調達とインフレにより返済計画が狂い(206の銀行・その内日本の銀行は35%)、当初予算の大幅な増加(99%増)等によってキャッシュフロー破綻となった。現在は、債務返済と利払いを凍結するという判決の下で、営業を継続しているという。

 当初より、英仏両国政府は、会社に安全基準を含む事業許可のみを与え、財政支援や債務保証をしてこなかった。そこで日英仏等、民間技術力を総動員して英仏海峡トンネルの「構造物と施設」は建設されたのだが、経営はもろくも破綻して、会社は自己再生を放棄した。こうして、大規模交通インフラ事業の民間資金によるBOT(ビルド・オペレーション・トランスファー)方式は、結果的に膨大な公的資金で救済せざるを得なくなったのである。

 以上の英仏海峡トンネルの成功(構造物と施設の建設)と経営上の失敗は、今後の大規模公共インフラ事業のあり方を示唆している。

 すなわち、大規模公共インフラ事業においては、その建設は公共投資で行い、国または地方自治体が土地及び施設設備を保有したほうが良い。そして、運行、運営、管理は、民間及び第3セクターが公共組織から構造物と施設等を借りて運営管理を行う。これが英仏海峡トンネルの教訓と言えよう。

(『友情新聞』2014年6月1日号より)

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 次回は、「国際ハイウェイ・日韓トンネルが開く未来①」をお届けします。


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