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シリーズ・「宗教」を読み解く 267
キリスト教と日本㊻
新渡戸稲造が『武士道』を著した理由

ナビゲーター:石丸 志信

 内村鑑三とは東京英語学校からの盟友であった新渡戸稲造は、札幌農学校第二期生の中でもいち早く「イエスを信ずる者の契約」に署名した学生の一人だ。


新渡戸稲造ウィキペディアより

 彼はキリスト教にさほど抵抗を感じてはいなかった。卒業後も、「願はくはわれ太平洋の橋とならん」(新渡戸稲造の記念碑より)との志を持って国際舞台で活躍していく。
 その彼も、ある時からなぜ自分がキリスト教徒になり得たのかを問い直している。

▲新渡戸稲造の記念碑(盛岡城跡公園)

 ドイツ留学時代にベルギーの法学大家ド・ラブレー教授から問われた一言が、そのきっかけとなった。

 ド・ラブレー教授から「あなたのお国の学校には宗教教育はない、とおっしゃるのですか」と問われ、新渡戸が「ありません」と答えると、教授は驚いて「宗教なし! どうして道徳教育を授けるのですか」と繰り返した。
 その時、即答できなかった新渡戸は内省を続け後にこの結論に達した。

 「私は、私の正邪善悪の観念を形成している各種の要素の分析を始めてから、これらの観念を私の鼻腔(びこう)に吹きこんだものは武士道であることをようやく見いだしたのである」(『武士道』第一版序)

 ド・ラブレー教授の問いかけた「宗教」は、単に信心という類いのものではなく、人格形成をもたらす倫理道徳体系の根幹をなすものの意味であったと思う。

 新渡戸は、キリスト教が排除された日本で自らを育んだ倫理道徳体系があるとすれば、「武士道」であることに思い至った。
 西洋の「騎士道」と比較し論ずれば西洋人にも理解できるだろうと、英文で『武士道(Bushido: The Soul of Japan)』を著した。

 新渡戸稲造が五千円札の肖像になった頃、一時の『武士道』ブームがあった。
 ある人は、西洋に対抗して日本には誇るべき魂があることを示そうとしたのだと捉えた。しかし新渡戸は、西洋やキリスト教に対する対抗意識や否定的な感情でこれを著したわけでは決してない。

 全てのものの創り主なる神と救い主イエス・キリストを受け入れ信じるに至るまでに、あらかじめ神は「正邪善悪の観念」が養われるよう自らを導かれていたのだと気付き恩師への回答のつもりで書いている。
 それは神の万民に対する救済意志を信じ、普遍の愛を受け止めていることを意味する。
 西洋と東洋が根本的なところで理解を得て共存共栄できるとの確信が根底にある。

 彼はまた、こう書き記している。

 「…私は、神がすべての民族および国民との間に―異邦人たるとユダヤ人たると、キリスト教徒たると異教徒たるとを問わず―『旧約』と呼ばれるべき契約を結びたもうたことを信じる」(『武士道』第一版序)

▲新渡戸稲造の像(十和田市新渡戸記念館)


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