シリーズ・「宗教」を読み解く 245
キリスト教と日本㉔
知恵を尽くし、結束して伝統を守った信仰共同体

ナビゲーター:石丸 志信

 かつてザビエルは、「日本人だけが極めて困難な状況のもとでも、信仰を長く持続していくことができる国民だ」とロヨラに宛てた手紙に書いている。
 初めて東洋にキリスト教をもたらしたザビエルが日本での2年余りにわたる滞在を通して得た実感だった。彼の見立てが間違いではなかったことは、その後の歴史において明らかになっていく。

 秀吉による日本26聖人や江戸時代初期の大迫害下における多くの殉教者たちの最期に、主のために生き、主のために犠牲になる潔い信仰者の姿が如実に現れている。
 さらに弾圧政策が施され徹底されていく中でも密かに信仰を守り通し、後孫へと継承していった人々がいたことは驚くべきことだった。

 国内には聖職者が一人も存在せず、新たに宣教師が来ることもできない状況下で、7世代にわたって密かにキリシタンの自覚を保ち続けることができたのは、単に個人の信仰が深かったということだけでは考えられない。彼らは知恵を尽くし、信仰共同体が結束して伝統を守ることに努め、未来に希望を託していった。

 宣教師は当初から、単にキリスト教の教えを伝えるだけでなく、日本の信者に信者としてふさわしい生き方をするよう指導してきた。日本人信者もそれを実践した。
 キリシタン時代の公教要理『どちりいな・きりしたん』にも「じひのしょさ(慈悲の所作)」として14項目の善行が記されている。

 これは福音に基づく隣人愛の実践であり、一人一人がキリスト教徒にふさわしい徳を身に付けていくための生活指針だった。
 さらに、日常的に慈善活動を行う「ミゼリコルディア」(慈悲)や「コンフラリア」(信心会)の「組」がつくられ、信仰共同体として働きを強めていった。

 こうした経験を生かし、弾圧下では潜伏組織がつくられている。長崎・浦上の村にこのような組織があったことは、検挙されたキリシタンの証言で明らかになった。
 この組織を統括している組頭として「惣頭(そうがしら)」が教理と祈りを担当し、教会の暦を教える役割を担う「帳方(ちょうかた)」とも呼ばれた。

 村にはいくつかの郷(ごう)があり、各郷には一人の「触頭(ふれがしら)」を置いた。触頭は、惣頭の伝達事項を下に伝えると共に、「水方(みずかた)」という洗礼を授ける役割も担っていた。郷はいくつかの字(あざ)からなり、各字には一人の「聞役(ききやく)」がいて、触頭から受けたことを字内の各戸に伝えた。

 こうして村内の全キリシタン家庭が等しく信仰を守り、密かにではあるが、ふさわしい季節に祝祭を共にし、支え合ってきた。
 新しく生まれた子供には洗礼を授け、共同体の一員として招き入れて育てていった。



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