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信仰の伝統
教会創立以前から文鮮明先生に侍って(74)

 家庭連合の信仰の長兄である金元弼(キム・ウォンピル)先生(1928~2010)の講話をまとめた書籍、「信仰の伝統」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 本書を通じて神様の深い愛と文鮮明先生の心情の世界、信仰の在り方を学ぶことができます。

金元弼・著

(光言社・刊『信仰の伝統 教会創立以前から文鮮明先生に侍って』より)

第二部[講話集]生命と愛と理想を懸けて
一、何よりも神のものを愛する

▲金元弼先生

イスラエル民族の血統の相続

 ナオミやルツのだんなさんがみんな亡くなって、ナオミが故郷に帰る時の、路上での三つの会話の内容を調べてみましょう。

 まず、ナオミは自分の母の家に帰りなさいと勧めました。ナオミは、お嫁さんの事情をよく知っていましたので、「あなたがたが、死んだふたりの子とわたしに親切をつくしたように、どうぞ、主があなたがたに、いつくしみを賜りますよう。どうぞ、主があなたがたに夫を与え、夫の家で、それぞれ身の落ち着き所を得させられるように」(ルツ一・八〜九)と言います。

 彼女は頼りにしていただんなさんを亡くし、二人の子供も亡くして、たった一人残ったのです。今頼れる人は、二人のお嫁さんだけです。しかし、彼女は自分のことを考えず、かえってお嫁さんのことを心配して、ただ「帰りなさい」と言うだけでは不安だったので、「新しい夫の家で平和な暮らしができるよう、主が配慮してくださり、前途を守ってくれるように」と言って安心させようとしました。

 二人のお嫁さんは泣きながら、「いいえ、わたしたちは一緒にあなたの民のところへ帰ります」(ルツ一・一〇)と答えます。あなたの民と言っているのを見ると、相対的に私の民があるのが分かります。あなたの民とは、イスラエル支派を言うのであって、自分の民を否定してイスラエル支派の民に、自分も入っていくことを強く述べているのです。

 ところがナオミはまた、泣いて訴えているお嫁さんたちに、「娘たちよ、帰って行きなさい。どうして、わたしと一緒に行こうというのですか。あなたがたの夫となる子がまだわたしの胎内にいると思うのですか。娘たちよ、帰って行きなさい。わたしは年をとっているので、夫をもつことはできません。たとい、わたしが今夜、夫をもち、また子を産む望みがあるとしても、そのためにあなたがたは、子どもの成長するまで待っているつもりなのですか。あなたがたは、そのために夫をもたずにいるつもりなのですか。娘たちよ、それはいけません。主の手がわたしに臨み、わたしを責められたことで、あなたがたのために、わたしは非常に心を痛めているのです」(ルツ一・一一〜一三)と言います。

 すると、自分の民を捨てて、あなたの民と一緒にいたいと言ったお嫁さんでも、この第二の勧めに逆らうのは、なかなか難しかったことが分かります。

 ナオミという人は、非常に開かれた人で、当時としては難しいことだと思うのですが、「私から離れて再びお嫁に行きなさい」と強く勧めているのです。もし普通の人がそういう立場に立つと、自分も今、全部を失って一人であり、同じ立場ですから、私と永遠に一緒にいましょうと考えるはずです。しかし、ナオミはそういう考えをしませんでした。

 兄のお嫁さんは、そう言いつけられた時に、心がとても弱くなったのです。そして我に返って、「私はここにいたって、もうお嫁に行くこともできないし、どうしてナオミと同じく、一人でいることができるであろうか」と思い、別れの接吻をして帰っていきます。

 しかし、ルツは動きませんでした。かえってナオミにすがりついて、拒んだのです。ところがナオミは、3回目の勧めをします。「ごらんなさい。あなたの相嫁(あいよめ)は自分の民と自分の神々のもとへ帰って行きました。あなたも相嫁のあとについて帰りなさい」(ルツ一・一五)。

 自分のために、夫婦のために、家庭の幸せのために、そこまではやったけれども、命を懸けて愛する自分の神、その信仰自体を否定することは難しいことでした。

 しかし、ルツは次のように答えます。「わたしはあなたの行かれる所へ行き、またあなたの宿られる所に宿ります。あなたの民はわたしの民、あなたの神はわたしの神です」(ルツ一・一六)。

 そう言われて、それ以上ナオミは勧めることができなくなってしまいました。第一、第二、第三と勧めた内容は、今、私たちが抱えている間題と似たものがあります。

 ナオミは本当に、自分と同じような対象を見つけることができました。

 ナオミは、イスラエルの血統を受け継がなければならない立場にありました。夫のエリメレクは、ちょうどイスラエル民族の血統の種みたいなもので、ナオミはそれを受け継ぐ重要な位置にあり、相続権をもっていたのです。

 ところが、夫は亡くなり、血統を受け継ぐ子供たちも全部亡くなったので、誰に受け継がせるかということが問題になります。それを見つけようとしたのが、第一、第二、第三の勧めの内容となるのです。ルツは自分自体を否定し、相対的な理想を否定し、自分の民族も神も全部否定した時に、初めてイスラエルの人として、イスラエルの家庭、イスラエル民族の一員として、その相続権を受け継ぐことができるのです。

 ルツには越えなければいけないもう一つの大きな峠が残っていました。つまり、イスラエルの血統を相続し得るか否かは、ナオミヘの返事によって認められるけれども、最終的な決定はまだ残っていたのです。

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 次回は、「何よりも神と神のものを愛する」をお届けします。


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