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青少年事情と教育を考える 214
虐待予防は良好な夫婦関係を基本に

ナビゲーター:中田 孝誠

 児童虐待は毎年増え続けています。
 先日、最新の統計が厚生労働省から発表されました。

 昨年度(2021年度)に全国の児童相談所が対応した児童虐待の相談件数は20万7659件(速報値)となり、過去最多を更新しました。
 前年度より2615件増えています。統計を取り始めた1990年度が1101件ですから、急増ぶりが分かります。

 最近の特徴は、「心理的虐待」が多いことです。「暴言を吐く」「無視をする」「拒否的な態度を取る」、さらに「夫婦げんかや虐待(DV)を子供に見せる」など、昨年度は約12万4700件、全体の6割を占めました。
 言い換えれば、夫婦の仲が良ければ、児童虐待はかなり防ぐことができるということです。

 また厚労省は、今後力を入れていく児童虐待防止対策の指針について発表しました。
 その内容は、児童相談所や市町村の体制の強化、虐待の発生予防と早期発見などで、特に新しい試みというわけではありません。

 例えば、子育ての相談ができる「こども家庭センター」の設置や家庭への訪問支援、産後ケアの取り組みを進めたり、親に対するペアレントトレーニングを実施したりするなど、親の子育てを助ける取り組みが中心になっています。
 一時保護も適切に行うと記されています。何より子供の安全を確保するという意味で、どれも大切な取り組みです。

 ただ、夫婦関係の改善といったような取り組みはありません。行政が家庭、まして夫婦関係にまで踏み込むことは難しいところです。
 子供が死亡した最近の60数件の事件を検証してみると、6割は実母が主な加害者で、育児不安や産後うつのケースが多いことも分かっています。

 前回の本欄で、父親が子育てに関わると父親の中に愛情ホルモンが増えて子供との関係が深まり、母親の育児のストレスが少なくなり、夫婦関係が良くなることが期待されると書きました。

 児童虐待予防を考えると、夫婦関係に目を向けることは最も重要な対策の一つだと言えます。
 行政がそこまで関わることは簡単ではありませんが、まずは子供のために自分たち自身の夫婦関係を見つめ直し、それを基に隣近所の家庭・夫婦にさりげなく気を配ることも大切なのではないでしょうか。