青少年事情と教育を考える 206
高校生の心の健康を家族関係が守った?

ナビゲーター:中田 孝誠

 新型コロナウイルスの感染拡大が、子供たちの精神面に大きな影響を与えているといわれます。心の不調を感じる子供が少なくないことが指摘されています。
 もちろんコロナ禍でなくても、幼少期から思春期にかけては精神的に不安定になりやすいことは、誰もが経験したことでしょう。

 さて、日本・米国・中国・韓国でコロナ禍を経験した高校生たちの意識調査の結果が公表されました。
 それを見ると、日本の高校生は「落ち込む」ことはあるものの、日常的には他国に比べて感情が安定していました。

 その一方で、日本の高校生は、家族・親との関係が良好で、コロナ禍前の調査に比べてもその割合が高くなっているという結果が出ています。
 調査は、昨年9月から今年初めにかけて実施されました。

 例えば、最近、「落ち込む」と感じた日本の高校生は43.3%(「よくある」「ときどきある」の合計)で、米国(44.6%)に次いで2番目に高い数字でした。中国は37.6%、韓国は38.1%です。

 ただ、それ以外の項目、「神経がたかぶり、心が安定しない」(日30.1%、米42.2%、中33.1%、韓41.3%)、「寂しい」(同35.4%、53.2%、35.4%、50.7%)、「なんとなくいらいらする」(同33.7%、61.9%、34.7%、39.5%)、「眠れない」(同25.8%、51.1%、29.4%、38.3%)などは、いずれも4カ国で最も低くなっていました。

 一方で、家族・親との関係では「家族との関係が良好である」(同58.3%、52.2%、54.7%、51.7%)、「親(保護者)は私のことを理解している」(同51.7%、34.9%、43.2%、41.8%)、「家にいると落ち着く」(同64.6%、48.8%、47.7%、45.9%)など、日本が最も高くなっています。

 しかも、コロナ禍前に比べて、これらの割合が大幅に高くなっているのです(「家族との関係が良好である」は、2014年の40.2%から2021年は58.3%に増加)。
 他国の場合は、横ばいか低くなっており、日本のような傾向は見られません。

 心の健康と家族関係について、報告書に詳しい分析はありません。
 ただ、傾向として、家族関係が高校生の心の健康を守っている一因である可能性は決して小さくないと思われます。
 実際、コロナ禍になって以降、家族の絆が深まったという声も少なくありません。

 もちろん、家族・親子関係はただ無意識に保たれるわけではありません。家族皆の努力が必要です。そして、子供が悩みや問題を抱えていれば、皆で支える。そのことを私たちは改めて意識するべきだと思います。