青少年事情と教育を考える 200
デジタル教科書の効果と影響

ナビゲーター:中田 孝誠

 学校現場では徐々にデジタル教科書が使用されるようになってきました。
 本格的な導入は2024年度ですが、文部科学省の中央教育審議会がデジタル教科書の効果的な使い方について検討しています。

 先月(2022年4月)、すでにデジタル教科書を使用している小中学校へのアンケート調査が公表されました(2021年11~12月、有効回答は小学校の中高学年が約3万件、中学校が約2万7千件でした)。

 その中で、デジタル教科書と紙の教科書を比べて何を感じるかを聞いたところ、デジタル教科書では「いろいろな情報を集めやすい」「図や写真が見やすい」「一度にいろいろな資料を見て比べやすい」の割合が5割を占め、紙の教科書(10~20%程度)を上回りました。

 一方で、「自分の学んだことを残しやすい」は紙の教科書を挙げる割合(40~50%)がデジタル教科書(20~30%)より高くなっています。
 「教科書の内容をとらえやすい」は、小学校ではいずれも30%程度ですが、中学校ではデジタル教科書が22.6%、紙の教科書は31.4%で、紙の教科書のほうがやや高くなっています。

 また、デジタル教科書を使うようになって「勉強が楽しいと感じるようになった」という回答は、全教科で半数を超え、小学校では特に社会、理科、英語で8割が「楽しい」と答えていました。英語など読み上げ機能が役立つ教科もあります。

 勉強が楽しいと感じられることは、とても大切なことです。
 その一方で、デジタル教科書に対する課題も指摘されています。

 一つは、使用する機器、端末の故障や回線の不具合の心配です。教科書が使用できなければ、子供たちの教育活動に支障が出るわけです。

 また、一人一人に端末が配布されますが、授業中にインターネットで自分の好きな動画を視聴したり、ゲームをしたりする子がいて、授業が中断して他の子に悪影響が出てしまう例もあります(読売新聞2022年4月18日付け)。

 昨年(2021年)本欄で取り上げた『デジタルで変わる子どもたち』(バトラー後藤裕子 著)によると、小学生から大学生にかけての世代では、物語ではデジタルも紙も読解に違いはありませんが、説明文などでは紙の方が読解力が高まるということです。

 現在の学校現場では、デジタルと紙の教科書を使い分けているケースが多くなっています。
 デジタルの良さを生かしながら、紙も活用して読解力を高める。教師はもちろん、保護者にとっても乳幼児期からの教育で意識したい点です。