青少年事情と教育を考える 195
家庭教育支援の取り組みが知られていない

ナビゲーター:中田 孝誠

 今年2月、文部科学省が家庭教育に関する意識調査の結果を発表しました(令和3年度家庭教育の総合的推進に関する調査研究〜『家庭教育』に関する国民の意識調査)。
 回答者は、子育て中か子育て経験がある人と、子育て経験のない人が、ほぼ半数の割合です。

 この中で、家庭で行うべき教育、または自分が受けた教育について聞くと、「あいさつやマナーなど社会規範を身に付けさせる」「物事の善悪を教える」「規則正しい生活習慣や生活能力を身に付けさせる」「思いやりの心を持たせる」が上位になっています。
 これらが家庭教育に対する一般的なイメージだと見ていいでしょう。

 一方で、国や自治体が家庭教育支援の取り組みを行っていることを「知っている」「名前は聞いたことがある」という人は、最も割合が高かった「相談窓口の設置」でも2割でした。
 「家庭教育の講座」や「保護者への訪問型支援」、「子どもの生活習慣に関するパンフレット」などを知っている人も15%程度、「家庭教育手帳」は12%にとどまっています。

▲家庭教育手帳

 自治体が行う家庭教育支援が、住民あるいは子育て中の親に十分に届いていない可能性がありそうです。
 子育てに悩み、本来は支援を受けてほしい人ほど相談窓口や講座の場に来ないといわれ、大きな課題にもなっています。

 ちなみに家庭教育手帳は、文部科学省が家庭教育に関するさまざまな情報を提供するもので、子供の発達段階に合わせて、「乳幼児編」、「小学1年~4年生編」、「小学5年生~中学生編」の三つがあります。

 この中では、多くの子供が安らぎのある楽しい家庭を望んでいることを紹介し、もう一度家庭を見つめ直すよう親に問いかけながら、子供の生活リズムやしつけ、安全と健康、遊び、家庭でのルール、思いやりなど、親が子育ての参考にできるような内容を掲載しています。

 児童虐待をはじめ、子供の養育環境がさまざまな問題を抱えていることは確かです。
 それでも、ほとんどの子供が家庭で多くの時間を過ごし、成長します。そのため、問題を抱えた親を支援して立ち直らせる取り組みもあります。
 そのようにして親子関係を改善し、子供たちが家庭で育つことができる環境をつくろうとしているわけです。

 そうした意味でも、家庭教育の支援が行われていることをもっと積極的に住民に知らせていく必要があるといえます。