青少年事情と教育を考える 185
スマホ所有は子供の心の健康の危険要因?

ナビゲーター:中田 孝誠

 新型コロナウイルスは子供たちの心の健康に大きな影響を与えていますが、小中学生ではスマートフォンを持っていることが、メンタルヘルスのリスク要因になっている可能性があることを、弘前大学の研究グループが明らかにしました。

 調査は、コロナ禍前の2019年9月と、コロナ感染が拡大した2020年7月、12月、2021年3月の四つの時点で行われました。19年9月の時点で小学4年生〜中学1年生だった子供とその保護者4227組が回答しています。

 それによると、19年9月ではスマホを所有している子供も所有していない子供も、PHQ-A(抑うつ症状得点)がどちらも4.3前後でほとんど差はありませんでした。

 その後、所有している子供の得点は21年3月までほとんど変わりませんでしたが、所有していない子供は3.5まで低下しました。抑うつ症状が改善していったわけです。この傾向は特に小学4年生で顕著に現れていました。

 ただ、研究グループは、今回の結果だけではスマホの所有そのものが抑うつ症状に直接の影響を与えたのかは分からないと述べています。

 別の研究では、保護者のスマホ利用の時間が長く、スマホへの依存傾向が高いと、家庭機能が低下して子供のメンタルヘルスも悪化する傾向にあることが明らかになっていると指摘しています。

 コロナ禍で、子供たちは友達との交流が制限されてきました。学校生活ではタブレットやパソコンを使ったオンライン授業が行われるようになりましたが、一方で運動会などの行事や体験活動が中止になったりもしました。つまり、子供たちの多くは自宅で過ごす時間が増え、スマホやタブレット、パソコンを使う時間も長くなっているわけです。

 ただでさえ子供たちの心の健康が影響を受けている中、家庭でのスマホへの向き合い方を今一度振り返る必要がありそうです。