青少年事情と教育を考える 186
子供たちの自殺から考える

ナビゲーター:中田 孝誠

 今月15日、全国大学共通テストの日に東京大学前で起きた高校生による刺傷事件は、大きな衝撃を与えました。
 けがをされた被害者が回復に向かっているのは幸いですが、2人の受験生が無事に受験できるよう祈るばかりです。

 さて、加害者の17歳の少年は、進路で悩みを抱えていて、事件を起こして死のうと考えていたといいます。
 少年が事件を起こすに至った動機や背景などは、まだ取り調べが行われている段階ですので軽々に述べることはできません。

 ただ、昨年10月には電車内での刺傷放火事件が起きましたが、事件を起こした24歳の若者は死刑になることを望んでいたといいます。こうした点からも、最近の事態を深刻に受け止める必要があると思われます。

 厚生労働省の『自殺対策白書』によると、2020年の10代の自殺者は777人で、前年(659人)より118人増えました。20代は2521人(前年比404人増)でした。他の年代はおおむね減っていて、若い世代の深刻な状態を浮き彫りにしています。

 文部科学省のまとめでは、2020年度の小中高校生の自殺者は499人に上りました。コロナ禍ということもありますが、前年度から100人増えました。

 文科省の別の資料で子供たちが置かれていた状況(自殺の理由とは断言されていません)を見ると、「家庭不和」が12.8%、「進路問題」が10.6%などとなっています。進路問題の悩みが子供たちに大きな影響を与えていることは確かです。ただし、半数以上(52.5%)は「不明」でした。

 文科省は自殺予防の対策として、①子供たちの心の健康の保持増進のためSOSの出し方に関する教育など自殺予防教育の充実を図り、必要な人材を確保する、②ICT(情報通信機器)を使って子供たちの状況を多面的に把握して悩みや不安を抱えている子供を早期発見・対応する、③関係機関の連携体制をつくる、を挙げています。

 昨年6月、政府の教育再生実行会議が、子供たちの過度な横並び意識を改善して一人一人の未来を切り拓く力を育てていくため、一人一人の幸せとともに社会全体の幸せでもある「ウェルビーイング(well-being)」の実現を目指すことが重要だという提言を発表しました。

 ウェルビーイングは、経済的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさや健康も含まれます。それが「持続可能な社会」になるというわけです。
 こうした幸せ感を持てる社会を目指す必要があるということでしょう。