青少年事情と教育を考える 180
大学の入学者数、初めて定員割れ

ナビゲーター:中田 孝誠

 今年春、全国の私立大学の入学者数が初めて定員割れとなりました。日本私立学校振興共済事業団が597大学を調査し、9月下旬に公表しました。

 それによると、全体の入学定員は49万5千人余りで、新設校があったため前年度から約4千人増えました。しかし、受験者数は50万人以上減って約366万4千人、入学者数は49万4千人(定員の99.8%)です。

 これまでも定員割れになった大学はありましたが、全体の入学定員を入学者数が下回ったのは初めてです。
 実際に定員割れになった大学は、ほぼ半数の277校でした。特に地方の小規模大学の定員割れが顕著です。

 定員割れの最大の要因はもちろん少子化です。

 大学界で今、大きな課題になっているのが「2040年問題」です。
 文部科学省の試算では、大学進学の年齢に当たる18歳人口は2017年度の120万人から2040年度には88万2千人まで減少し、大学進学者数は50万6千人となります。これは2017年度より12万人以上の減少です(大学進学率はやや上昇して57%と想定しています)。入学者の割合は東京で92%、大阪でも79%となり、地方では70%以下になる都道府県も増えます。

 すでに始まっている大学の倒産が大規模に進んでいくことが予想されます。
 こうした事態に備えて大学界が模索している方策がいくつかあります。

 一つは「社会人の学び直し(リカレント教育)や留学生の受け入れ」です。また、おのおの大学の特徴を生かした学部開設なども行われてきました。

 二つ目は、大学同士の連携です。例えば、国立の名古屋大学と岐阜大学が運営を統合したように、国立大学であっても運営を見直す動きが起こっています。

 そして三つ目は、地方自治体や産業界との連携です。大学が研究や教育(人材育成)によって、地域への貢献を強化し、地方創生に貢献するという動きです。地方の小規模大学が公立大学として再出発するという例も各地で見られるようになっています。

 大学が直面する課題は、次世代の育成に直結する国家的な問題です。
 次回も大学の問題について取り上げたいと思います。