青少年事情と教育を考える 178
スマホを使ったいじめの増加

ナビゲーター:中田 孝誠

 今月13日に文部科学省が公表した調査で、昨年度のいじめ認知件数が前年度より9万5千件余り減少したことが分かりました。

 文科省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸問題に関する調査」です。
 それによると、昨年度のいじめ認知件数(いじめとして把握された件数)は517163件で、前年度より95333件、割合では15.6%減少しました。減少したのは7年ぶりです。
 このうち、小学校が42897件、中学校が8877件、高校が13126件などとなっています。

 いじめが減少したこと自体はもちろん喜ばしいことですが、減少の要因は、コロナ禍で休校が続いたこと、学校が再開してもクラスの人数を分けて授業が行われたり、さまざまな活動が制限されたりするなど、子供たち同士の接触が少なくなったためではないかと指摘されています。

 また、2013年に「いじめ防止対策推進法」が施行されましたが、この内容が学校や教育委員会に徹底されず対応が不適切だと批判されるケースもあります。

 もう一つの問題は、スマートフォンや携帯電話を使ったいじめは増え続けていることです。スマホなどで、誹謗(ひぼう)・中傷や嫌なことをされた、といったいじめは1万8870件で、逆に7年連続で増加しています。

 昨年11月には、東京町田市の小学校で全児童に配布されたタブレット端末を使って中傷された6年生の女子が自殺するという痛ましい事件が起きました。
 この学校はICT(情報通信技術)教育のモデル校でしたが、全員が同じパスワードを使うなど、管理にも問題があったことが明らかになりました。

 1人1台のタブレット配布が進み、活用が本格化してきます。
 今回の選挙公約でもICTによる教育の質の向上を掲げる政策が見られます。ただ、タブレットの活用だけでなく、心を育てる教育にも取り組むべき責任が親や教師にはあることを忘れてはいけないでしょう。