青少年事情と教育を考える 177
選挙公約に見る子供のための政策

ナビゲーター:中田 孝誠

 今回の衆議院選挙で各政党が掲げる公約のうち、子供に関する政策を見てみると、次のような内容があります。

 「妊娠、出産から子育てまで支援する拠点を全市区町村に創設」
 「子ども・子育て予算の倍増」
 「待機児童の減少、児童手当の強化または所得制限の撤廃、対象を高校卒業年次まで拡大」
 「保育料無償化を全世帯に拡大、高等教育無償化の所得制限の額を拡大」
 「子ども家庭庁、または子ども省を創設、子ども基本法の制定」

 日本においては少子高齢化への対応が緊急課題です。それと同時に、生まれてきた子供を大切に育てることは政治信条に関係なく、国として取り組むべき最重要テーマの一つです。その意味で、子供のための政策が議論されることは必要です。

 もちろん上記の政策について、本当に実現可能なのか、予算の裏付けはあるのかなど、しっかり見極める責任が有権者にはあります。
 そして、子供たちを健やかに育てることができる社会にしようという意識を国民全体で高めることができれば、こうした公約にも意味があると言っていいかもしれません。

 ただし、子供のための政策は、子供だけに焦点を当てても実現できるものではありません。子供が育つための最も基本の単位である家庭が安定することが重要だからです。

 その点で今回、不安なことがあります。
 選択的夫婦別姓、さらに同性婚を認めるといった公約を、自民党以外の多くの政党が掲げていることです。
 公示日前の党首討論では岸田文雄自民党総裁だけが賛成の挙手をしなかった、というニュース報道までありました。

 しかも各党とも上記のような子供・子育て支援の政策をうたいながら、選択的夫婦別姓や同性婚を実現した場合の子供への影響については言及がほとんど見られません。

 例えば、選択的夫婦別姓を導入する場合に懸念されているのが、名字が家族の呼称でなくなることと、子供の姓が不安定になることです。父親か母親と姓が違うだけでなく、子供の姓も夫婦のどちらかを選ぶことになり、兄弟で姓が違うといったことが起こり得るわけです。

 高市早苗自民党政調会長は「私が『夫婦別氏制度』の導入に反対を続けてきた最大の理由は、『子の氏の安定性』が損なわれる可能性があるからだ」と語っています(『正論』20216月号)。

 また、内閣府の世論調査でも、夫婦の名字が違うことは「子どもにとって好ましくない影響があると思う」という回答が6割を超えていました(2017年)。

 結婚する時か出生時にあらかじめ決めておくか、決められなければあらかじめ規定を設けておけば問題はないという意見もありますが、現実にはそうした決め方では祖父母や親族を巻き込む争いになる恐れがあると指摘されています(『明日への選択』20217月号)。

 このように、子供への影響を心配する声が非常に大きいことを見逃すべきではありません。岸田総裁が国民の間にはさまざまな意見があるので議論が必要と語ったことは当然でしょう。

 子供のための政策を訴えるのであれば、大人の権利や要望だけでなく、子供への影響を丁寧に検証し、子供の福祉を守るという観点から公約として掲げるべきでしょう。