シリーズ・「宗教」を読み解く 180
キリスト教の人生観⑫
新しいイスラエル選民が生まれた日

ナビゲーター:石丸 志信

 復活したイエスによって許された使徒たちは、喜びと感謝にあふれていた。再びエルサレムに集まった使徒をはじめ120人の弟子たちは、心一つに祈りを続けていた。
 イエスが十字架上で亡くなられた過越祭から7週間がたち五旬祭(ペンテコステ)の季節を迎えていた。

 五旬祭の朝も彼らはイエスと共に最後の晩餐(ばんさん)を過ごした部屋で祈っていた。すると突然、激しい風が吹くような音が響き、舌のようなものが炎のように分かれて、一人一人の上に留まった。一同は聖霊に満たされ、さまざまな言語で語り始めた。周りにいたユダヤ人たちが驚き怪しんだので、ペテロが立ち上がって説教を始めている。

▲レオナルド・ダ・ヴィンチによる
「最後の晩餐」(ウィキペディアより)

 ペテロは、神はイエスを復活させ、天に上げられ、約束どおり聖霊を送ってくださった、イエスこそキリストであると堂々と語った。
 その姿は、訳も分からず地上で歩むイエスに付き従った時とは全く違っていた。さらにペテロは罪の許しを得るためのバプテスマ(洗礼)を受けるよう人々に呼び掛けると、3000人が受け入れ、使徒たちの仲間に加わったと使徒行伝には記されている。

 この日、使徒をはじめイエスによって許された弟子たちは、聖霊によって生まれ変わった。バプテスマを受けた者たちは、新しい生命の息吹を得て、神の子になった。
 この経験がキリスト教の原点にある。主を裏切ったイスラエル選民ではなく、二度と裏切りたくないとの決意を抱く新しいイスラエル選民が生まれた日である。