青少年事情と教育を考える 166
スポーツ選手と道徳教材

ナビゲーター:中田 孝誠

 東京2020オリンピックが開幕して1週間。連日熱戦が続いています。当初は開催が危ぶまれながらも、日本選手の活躍もあって大きな盛り上がりを見せています。

 さて、オリンピックをはじめスポーツ選手の活躍は、現在使われている教科書にも多く取り上げられています。

 例えば、小学校の道徳教科書『生きる力』(日本文教出版)では、今回も金メダルをとった女子ソフトボールの上野由岐子選手が、前回金メダルだった北京オリンピックの後に監督から掛けられた言葉「ソフトボールに恩返しを」を題材にしています。この中では感謝の思いがテーマになっています。

 また、文部科学省が作成した『私たちの道徳(小学56年版)』には、パラリンピック陸上競技に参加した佐藤真海選手が、病気で足を失いながらも陸上にチャレンジする姿が掲載されています。佐藤選手は今回の東京オリンピック招致の際にIOC総会でプレゼンテーションを行いました。

 この他、今回の東京大会に参加している柔道の大野将平選手や水泳の萩野公介選手など数多くの選手が登場しています。

 道徳の学習指導要領には、「より高い目標を立て、希望と勇気をもち、困難があってもくじけずに努力して物事をやり抜く」や、「他国の人々や文化について理解し、日本人としての自覚をもって国際親善に努める」という教育目標が書かれています。

 また、家族をはじめ多くの人に支えられていることに感謝するという内容もあります。
 これらを子供たちに身をもって伝えているのが、上記のような選手たちということでしょう。

 オリンピックにさまざまな課題があることも事実ですが、このような形で子供たちの成長に良き影響を与えてくれることを思うと、今回の開催の成果を未来の世代のために生かしていきたいものです。