青少年事情と教育を考える 158
デジタルと紙の本と子供の読解力

ナビゲーター:中田 孝誠

 先週の本欄で、学校現場のGIGAスクール構想の課題について取り上げました。
 それは「教師のICTを活用する能力」「視力の低下など子供の健康面」、そして「子供たちの読解力に与える影響」です。

 このうちの読解力について、前回も取り上げた『デジタルで変わる子どもたち』(バトラー後藤裕子著)を参考に、もう少し付け加えたいと思います。
 それは特に「デジタルの本と紙の本の違い」についてです。後藤氏はアメリカのペンシルベニア大学教授です。

 後藤教授によると、デジタル絵本・物語本は欧米では、例えば学習障害を起こすリスクのある子供に対して、文字認識の向上やストーリー理解に役立つといわれています。ナレーションなどさまざまな機能が、母語の読解などの有効な手助けになるというわけです。

 一方で、アメリカでは最近、紙の絵本の良さを見直す動きがあるということです。
 研究によると、紙の絵本を保護者と一緒に読むと、デジタル絵本を読むより読解が進むというのです。その要因として、保護者は紙の本を読むときの方が子供に多く話し掛け、その内容もストーリーを確認したり、コメントしたりするような読解に直結するものが多いといいます。

 また、小学生から大学生にかけての世代では、物語ではデジタルも紙も読解に違いはありませんが、説明文などでは紙の方が読解力が高まるという研究があると後藤教授は述べています。

 日本でもデジタル教科書が2024年に本格的に導入されます。
 デジタルにはさまざまな利点があります。子供によって学習の進み具合、内容の理解には違いが出てきますから、それに対応して個別に学びを深めることができるのもデジタルの良さでしょう。

 そうした良さを生かしながら、紙も活用して読解力を高める。もちろん生まれた時からデジタルに触れている世代ではありますが、保護者にとっても乳幼児期からの教育で意識したい点です。