青少年事情と教育を考える 157
教育のデジタル化と教師の負担、子供の読解力

ナビゲーター:中田 孝誠

 本欄でも何度か取り上げましたが、学校現場ではGIGAスクール構想と呼ばれるICT(情報通信技術)環境の整備を急いでいます。特にコロナ対策を契機に、大半の学校で1人1台の端末配布が一気に進みました。

 文部科学省はこれによって「個別最適な学び」が進むと期待しています。今後、デジタル教科書も普及しますが、デジタル教科書とさまざまな教材を使って、児童生徒の状況に合わせた授業も行いやすくなるでしょう。

 一方で、課題も明らかになっています。

 一つは、教師のICTを活用する能力です。
 自身が使うことはできても、授業で活用することには自信がないという教師も少なくありません。このため、文部科学省は教科ごとにICTの効果的活用法を示した資料を発行しています。

 ただ、多忙な教師にさらに負担がかかることを考慮し、慌てずに時間をかけて進めた方がいいという声もあります。

 また、子供の健康面では、特に視力の低下が進むのではないかと懸念されています。

 さらに、子供たちの読解力に与える影響です。

 言語学の研究者によると、テキストを多く読んだ経験があるとデジタルの本と紙の本をうまく使い分け、読むときも集中できます。しかし読む力が弱いと、読むこと自体が苦痛になり、長い文章を最後まで読む読解力に影響する可能性があると言います(『デジタルで変わる子どもたち』バトラー後藤裕子著)。

 この問題について、次回もう少し触れてみたいと思います。