スマホで立ち読み Vol.38
『“人さらい”からの脱出』13

小出浩久・著

(光言社・刊『“人さらい”からの脱出 違法監禁に二年間耐え抜いた医師の証言』〈2023年11月20日改訂版第2刷発行〉より)

 スマホで立ち読み第38弾、『“人さらい”からの脱出』を毎週水曜日(予定)にお届けします。
 2年間にわたる拉致監禁後、「反統一教会グループ」の一員として活動した経験のある筆者。そんな筆者が明らかにする、「脱会説得」の恐ろしい真実とは。

 今回は、前回の続きからお届けします。

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1 15カ月間の監禁生活

三、東京のマンションでの説得⑤

 監禁後、一週間くらいして、私は一度、脱出できないかどうか、ドアに近づいてみた。しかし、十数名の人が見張りとして泊まり込んでおり、とても無理だと悟った。

 窓は(特別な器具が取り付けられていて)開かないようになっているうえに、灰色のセロハン紙で中から外が見えないようになっていた。

 食事は朝昼晩と規則正しく出された。特に夜の食事は、親戚の女性が腕を振るってかなりのご馳走(ちそう)を作ってくれた。

 しかし、外の世界の情報は何も入らなかった。テレビもなく、ラジオもない。新聞などを読むこともなかった。ただ読めるものといえば『聖書』『原理講論』『御旨と世界』、その他には統一教会かキリスト教関係の書物だけだった。

 私を監禁した直後から、父も母も朝から聖書などを読んでいた。二人とも何か使命感に駆られながら読んでいるかのようだった。それでも母はよく居眠りをした。聖書など読んだことがないのだから、当然といえば当然のことであろう。

 私はそれまで聖書を通読したことがなかったので、監禁されたとはいえ、聖書をじっくり読めること自体はうれしかった。

 しかし、聖書は普通の本のようにただやたら読んで、その意味するところが理解できるような代物ではなかった。そのときは必死であったが、『原理講論』で解説が加えられているところ以外は、字面を追っていただけのように思う。聖書に本格的に取り組むとともに、その素晴らしさを体験したのは、それから何カ月かのちのことであった。監禁が長期化し偽装脱会(信仰を失ったふりをすること)をして毎日、自分を偽り続けたとき、内面的な苦しみの極みに置かれたときであった。

(続く)

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 次回は、「東京のマンションでの説得⑥」をお届けします。



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