2025.07.02 22:00
スマホで立ち読み Vol.38
『“人さらい”からの脱出』12
小出浩久・著
スマホで立ち読み第38弾、『“人さらい”からの脱出』を毎週水曜日(予定)にお届けします。
2年間にわたる拉致監禁後、「反統一教会グループ」の一員として活動した経験のある筆者。そんな筆者が明らかにする、「脱会説得」の恐ろしい真実とは。
今回は、前回の続きからお届けします。
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第1章 15カ月間の監禁生活
三、東京のマンションでの説得④
監禁されて一週間ほどたった日曜日の昼間、私が学生のとき、私の信仰を指導してくれたこともあるOさんという人が訪ねて来た。私はその時まで、Oさんが信仰を捨てていることを知らなかったので、非常に驚いた。かつ、悲しくなった。
彼女にどうして統一教会をやめてしまったのかを聞きたくなった。そこで、いろいろ話をしてみることにした。
Oさんの場合は、監禁を二回されたという。一回目は信仰を捨てたふりをして外に出て、そして逃げたのだという。その後、再度の監禁を恐れて両親には居場所を知らせずに転々としていた。その時も、各地で信仰をもった先輩として、新しく信仰をもった人たちを指導するような立場にあり、私も幾度かその指導を受けたことがあった。
彼女によると、彼女が所属していた教会では、彼女が信仰を捨てたことが知らされると、多くの人がショックを受けるかもしれないということで、教会員には知らせないでいるのだということだった。
Oさんは1988年10月に行われた6500組の合同結婚式参加後、再び監禁された。
この二度目の監禁のときは、「もう一度嘘をついてでも逃げなければならない。かりに一生、信仰に基づいた家庭を築けなくても、一人でも、隠れてでも信仰をもち続けていく決意をしなければならない」
そう思ったという。
でも、そう決意するのは本当につらかった。
彼女は内面ではそんな葛藤をしながら、『御旨と世界』(*6)を読んでいった。
『原理講論』の記述にいくつかの理解しにくいところがあることは知っていた。弟子が書いたのだからマチガイもあるだろうと思ったそうだ。
しかし、メシヤの直接のみ言(ことば/『御旨と世界』)に少しの誤りもあるはずはない、そう思っていた彼女は『御旨と世界』を読んで頭に入れておけば、信仰を失うはずがないと思ったという。
かなりの短期間で読み終えた。
そして、宮村氏と話をした。その時は、「誰かと話をしたい。一人で苦しんでいるのは耐えられない」という気持ちにまで追い詰められていた、という。
この時、宮村氏は
「『イエス様のゴルゴタにおける三次の祈り』なんて文鮮明(ムン・ソンミョン)は言っているが、イエスが祈ったのは『ゲツセマネ』だろう」
「文鮮明の話によると1987年には共産主義は絶滅していなければならない。しかし、今もって共産主義国は存在している。どう説明するんだ」
「文鮮明は中国は亜熱帯文明といっているが、そんなことはない。英国、米国、日本も文鮮明が言うような亜熱帯文明なんかじゃないぞ」
などと、『御旨と世界』の“マチガイ”を指摘してきたという。
彼女はマチガイがあってはならないはずの『御旨と世界』のマチガイを指摘されてしまった。
私の信仰的観点から見ればあまり意味のない“マチガイ”の指摘ではあるが、彼女の心の中ではメシヤに対する信仰は音をたてて崩れてしまった、という。
「小出君も落ち着いて、よく考えてみるといいわ」と、しみじみ言った。
彼女は私を責めることもなく、また「気違い」のように扱うこともなかった。
(続く)
*6:1969年~1984年、ダンベリー刑務所に収監されるまでに韓国、日本、米国、ヨーロッパで文鮮明師が語った説教、講演を集めたもの。私が監禁された頃には、信者の必読書と言われていた。
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次回は、「東京のマンションでの説得⑤」をお届けします。