スマホで立ち読み Vol.38
『“人さらい”からの脱出』11

小出浩久・著

(光言社・刊『“人さらい”からの脱出 違法監禁に二年間耐え抜いた医師の証言』〈2023年11月20日改訂版第2刷発行〉より)

 スマホで立ち読み第38弾、『“人さらい”からの脱出』を毎週水曜日(予定)にお届けします。
 2年間にわたる拉致監禁後、「反統一教会グループ」の一員として活動した経験のある筆者。そんな筆者が明らかにする、「脱会説得」の恐ろしい真実とは。

 今回は、前回の続きからお届けします。

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1 15カ月間の監禁生活

三、東京のマンションでの説得

 この時、両親から、この数日私が聖書を読んでいることを知らされた宮村氏はこう言った。

 「どうせ、聖書なんてほとんど知らないだろう。試しにアモス書について説明してみろ」

 その時点ではアモス書(*3)が旧約聖書の預言書の一つということぐらいしか知らなかったので、私は黙っていた。

 すると、『原理講論(*4)』の再臨論(*5)を開かせ、そこの“矛盾点”を指摘し始めた。

 「『古くから、東方の国とは韓国、日本、中国の東洋三国をいう』と書いてあるが、『古く』というのはいつごろのことだ。こんなふうに言われたことがあったのか。『日本は代々、天照大神を崇拝してきた国……』とか書いてあるが、よく考えてみろ! 日本は仏教国じゃないか」

 周りの家族や親族もそのとおりだという感じでうなずいていた。

 私は、「なるほど宮村氏の主張も一理あるな。『原理講論』に書いてあるからといって無条件に『絶対的に正しい』と考えがちだったな。一つ一つを辞書で単語を調べたりしながら、著者の言わんとするところをしっかりと深く勉強する必要があったな」と反省した。

 しかし一方では、宮村氏のこの話し方を聞いて、自分の論理を押しつけ認めさせなければ満足しないタイプで対話が成立しない人と思った。

 確かに日本は現在仏教国の範疇(はんちゅう)に入る国ではあるが、仏教伝来以前から庶民は天照大神を崇拝していたのだから……。

 この時は、反省するとともに「ははあ、こういう論法で『原理講論』はマチガイだらけでおかしいという発想が出てくるのだな。元教会員たちは宮村氏などから『原理講論』はマチガイと言われて、本当の意味で勉強をすることをせずに、ただ宮村氏の言われたままを信じて反発心をもつだけなんだ」と思った。と同時に「『原理講論』全体として訴えている内容はスゴイものなのだ。今までの哲学者や宗教家が解決しえなかった多くの問題に解答を出している。私たちが歩むべき道もはっきりと教えてくれている」との“考え”は揺るがなかった。

 元統一教会員がその価値を誤解させられていることが残念でならなかった。

 日本の歴史に関連した批判のあとに、宮村氏は統一教会の儀式の中で非常に重要とされている「三日行事」のことを話題にしてきた。

 「統一教会では、夫婦は文鮮明(ムン・ソンミョン)が組み合わせ、いちいちセックスの仕方まで指導するんだぞ。なんていやらしい宗教なんだ。こんなこと君は知らないだろう」と言ってきた。

 私がまだ祝福を受けておらず、合同結婚式に参加していないことから、歪(ゆが)んだ話でショックを与えようと思ったようだ。

 しかし、私は自分が統一原理を伝え既に合同結婚式にも参加した友人や先輩から、その儀式の「意義と価値」、さらには儀式を通して友人が感じた神様の愛までを聞いていたので、宮村氏のいかにもいかがわしいものであるかのような思わせぶりな発言に対し、何のショックも受けなかった。

 何らかの反応を宮村氏は期待していたようで、ショックを受けるようすを見せない私に、拍子抜けをしたようだった。

 むしろ私は「両親のいる場で教会を批判するためとはいえ、こんなことを言うとは、宮村という人物はやり方がいやらしい」と思ったが、声に出しては言わなかった。

 宮村氏の話が一段落すると、私は再び「基本的人権」を主張し続けた。

 後で気がついたことだが、宮村氏は私のところに一度も一人では来なかった。必ず元信者二、三人を連れて来た。案外気が弱いのかもしれない。そして、寂しがり屋なのだろう。説得の場でタバコを片時も離せないのも、不安を紛らわせている現れなのかもしれない。

 その後、宮村氏は、しばらく来なくなった。

(続く)


3:預言者アモスの説教や詩、また彼が見た幻について書かれたもの。
4:家庭連合の基本的教理解説書。
5:イエス・キリストが十字架で亡くなられるとき、「再び来る」と言われた。イエス・キリストがいつ、どのようにして、どこに来られるかを論じたところ。

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 次回は、「東京のマンションでの説得④」をお届けします。



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