2025.07.01 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 371
ユダヤ・キリスト教の歴史に見る母なる者の使命③
タマル
ナビゲーター:石丸 志信
ヤコブは勝利者として認められ、「イスラエル」という名を与えられた。
こうしてアブラハム、イサク、ヤコブの3代でイスラエル民族の基が据えられた。彼らは民族の父祖であり、その妻サラ、リベカ、ラケルとレアは民族の母となった。
続く創世記の物語はヤコブの子らを通して12部族が生み広がることを予見させる。
その中で主人公となるのは11番目の息子で愛妻ラケルの初子ヨセフだ。
憎しみ嫉妬で引き裂かれた兄弟が和解への道をたどる物語の中心にヨセフが立っている。
それならば、イスラエル民族の母たる者の栄光はヨセフの妻に受け継がれてもよさそうだが、聖書はそうは語っていない。
ヨセフの妻アセナテがエジプトの祭司の娘だったからだろうか。そしてヨセフも12部族の一つに名を遺(のこ)すことができず、アセナテとの間に生まれた息子マナセとエフライムが代わって12部族の名となった。
ヤコブの息子たちの中でヨセフの他に特別なエピソードが記されているのが四男ユダだ。
そして聖書は長男の嫁となったタマルに注目している。ユダとタマルのエピソードはヨセフ物語の中に唐突に差し挟まれているのだ。
継嗣(けいし)を遺さないまま夫を亡くしたタマルは、イスラエルの血統が途絶えるのを恐れ、舅(しゅうと)ユダを誘惑しその子を宿した。寡婦が不貞を犯したと殺されかけたが、ユダの子であることが証明され死を免れた。
その子は双子で、胎内で争いながらも、ヤコブとエサウの時とは違って、弟が兄を押しのけて先に生まれ出てきた、と記されている。
なぜここでタマルのことが語られるのかは明確には分からなくとも、イスラエルの民は「律法」に記された母としてタマルを蔑視することはなく、かえって敬意を払ってきた。
イスラエルの歴史を再構成した歴代志上にはイスラエルの子らの系図が書かれている。そこにはこうある。
「ユダの子らはエル、オナン、シラである。この三人はカナンの女バテシュアがユダによって産んだ者である。ユダの長子エルは主の前に悪を行ったので、主は彼を殺された。ユダの嫁タマルはユダによってペレヅとゼラを産んだ。ユダの子らは合わせて五人である」(歴代志上 第2章3~4節)
ペレヅとゼラがユダの正統な子で、この系図はペレヅにつながる。
イスラエルの伝統に立って書かれたマタイ福音書の冒頭には、アブラハムに始まりダビデを経てイエス・キリストに至る系図が記される。
そこにもはっきりと「ユダはタマルによるパレスとザラとの父」(マタイによる福音書 第1章3節)と彼女の名を刻んでいる。
その子孫にダビデ王が生まれたと聖書には明記され、イスラエルの民は彼女の名を記憶してきた。そして、その系譜から神の子であるイエスが誕生したのだと福音書は告げている。
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