青少年事情と教育を考える 145
小学校教員採用試験、倍率が過去最低に

ナビゲーター:中田 孝誠

 2019年度に行われた公立小学校の教員採用試験倍率が過去最低の2.7倍になったことが明らかになりました。
 このところ倍率は低下傾向にありましたが、今回は調査を始めた1979年以降で最低の数字でした。

 中学校は5.0倍、高校は6.1倍です。全体の受験者は前年より1万人余り減って13万8千人、倍率は3.9倍になりました。採用者数は約1万7千人です。

 自治体別に見ると、小学校で最も低かったのは佐賀県と長崎県の1.4倍で、高かったのは高知県の7.1倍です。12の自治体で2倍を下回りました。

 志願者減少、倍率低下の原因は、①第2次ベビーブーム時代に大量採用された教員の退職時期に当たっていて採用数が増えた、②教員の負担が大きく学生が民間企業に流れている、などが指摘されています。
 小学校の場合は、教員養成課程のある大学が限られる一方、採用人数は小学校が最も多いという理由もあります。

 しかも、小学校では「35人学級」が導入されることになりました。児童生徒数は今後減少していくとはいえ、教員の人数を一定数確保しなければなりません。文部科学省は段階的に3万人程度の教員を増やしたいと考えています。

 ちなみに、採用倍率が3倍を下回ると質の低下が心配されるといわれています。これについては具体的なデータで明らかにされているわけではなく、この説を疑問視する専門家もいますが、数を増やすだけでなく、指導力を持った若手を養成していく必要があるのは確かです。

 別の調査ですが、過去10年間に小中学校教員の平均年齢は低下を続け、若手の割合が高くなっています。

 人口減少が進む中、教員の人材を確保することも容易ではありません。
 小学校高学年の一部の教科では、中学校と同じように「教科担任制」を導入して、各教員の負担を少しでも減らそうとしています。

 また、採用試験の受験の年齢制限をなくす自治体も増えつつあります。英語の資格や民間企業での勤務経験、国際貢献活動の経験などによる特別選考を実施する自治体もあります。
 教育という重要な使命を担う人材の確保と質の向上については、今のところ決め手となるものがありませんが、国を挙げて力を入れるべき重要課題であることは間違いありません。