青少年事情と教育を考える 144
教育はデジタルと紙の併用で効果

ナビゲーター:中田 孝誠

 今、教育界はデジタル化がキーワードになっています。
 もともと日本は遅れていた分野ですが、特に新型コロナウイルスの影響でオンライン授業が増え、GIGAスクール、子供1人1台の情報機器の整備が予定より前倒しで進められるようになりました。

 また、デジタル教科書や電子黒板を使った授業も行われるようになっています。
 読み上げ機能などをうまく活用すれば、勉強に対する子供たちの関心も引き出せると言われます。ただし、紙の教科書やノートがなくなるわけではありません。

 「教育新聞」(1月14日付け)で紹介された横浜市の小学校では、授業で先生が子供たちの発言を黒板に板書したり、子供たちがノートに自分の考えをまとめたりしています。自分で考えたことをまとめるには、紙に自分で書く行為が大切で、紙とデジタルをうまく使い分けるのが理想だというわけです。

 また、東京都のある小学校の校長は、デジタル教科書は子供が自力で解決する力や発表する力を身に付けるのに適していると言います。ただ、デジタル端末を使いすぎると、ノートや板書が減り、「子供が何となく『分かったつもり』になって授業が終わってしまう」という問題意識を持っているそうです。

 最近、『スマホ脳』(新潮新書)という本が話題になっていますが、その中で次のようなアメリカでの研究が紹介されています。
 大学生にTEDトーク(各分野の著名人のプレゼンテーションなどを配信している)を視聴させて、一部の学生には紙とペン、他の学生にはパソコンでノートを取らせたところ、紙に書いた学生の方が内容をよく理解できていたということです。
 この研究は、パソコンより手書きでノートを取る方が利点があると結論付けています。

 どういう理由でそうなるかは正確には分かりませんが、パソコンでは聴いた言葉をそのまま入力するだけですが、手書きの場合は何をメモするか優先順位を付けなければなりません。そこで、いったん情報を処理する必要があるために内容を吸収しやすくなるのではないかと推測しています。

 デジタル化は今後の教育にとって必要なものですから、今後も進んでいくはずです。ただ、紙の媒体によって考えをまとめる力が身に付くというわけです。その活用の仕方は工夫していかなければならないということです。