青少年事情と教育を考える 134
アメリカ最高裁と結婚、家族の在り方

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回に続き、アメリカ大統領選挙に関することを取り上げます。と言っても、トランプ大統領とバイデン候補ではなく、連邦最高裁判所の判事に指名されたエイミー・バレット氏の話です。

 メディアでも報道されたように、連邦最高裁は時の社会問題に大きな、そして長期の影響力を持ちます。

 例えば、かつてリベラルな考え方を持った最高裁長官アール・ウォーレン氏の時代に、学校に関わる判決として「学内での祈祷禁止」(1962年)、「聖書朗読禁止」(1963年)の判決が出され、長く影響を与えてきました。

 このため、判事が亡くなったり引退するなどして空席ができると、毎回、共和党と民主党の間で後任を巡って激しい議論が展開されます。

 今月、連邦議会上院の司法委員会で、バレット氏の承認に向けた公聴会が行われ、今回も共和、民主で激しいやり取りがありました。大統領選の行方にも関わるとして、今月中に議会で承認されるかどうか注目されています。

米国会議事堂

 一方、バレット氏がホワイトハウスでトランプ大統領から指名を受けた時の様子が伝えられています。

 ジャーナリストの木村太郎氏の記事(東京新聞10月6日、『国際通信』)によると、バレット氏は夫と6人の子供と一緒に壇上に並んだのですが、その中に2人の黒人の子がいました。夫妻がハイチから迎えた養子でした。夫妻は恵まれない子供たちを養子に迎え、今は立派に成長していました。

 また、バレット夫妻にはもう一人、実子でダウン症の子供がいるのですが、カトリック信者のバレット氏は妊娠中にそのことが分かっても出産し、「充実した人生を与えてくれます」と答えたそうです。

 こうしたバレット氏の家族の話が伝えられると、普段はトランプ政権を批判するワシントンポスト紙も「彼女の家族や母親としての在り方には希望の兆しを感じる」と書いたというのです。

 ちなみに、結婚と家族の在り方をどう見るかによって、最高裁判事の間で意見が大きく分かれることがあります。

 例えば、2015年の同性婚合法化は賛成5人、反対4人の僅差で決まりましたが、この時の背景として、賛成した判事の中に結婚は当事者の権利であり二人の幸福のために為されるものであるから同性婚も認められるべきだという考え方があった、そこには結婚は社会的な制度であり将来生まれてくる子供の福祉と親子関係を保護するものだという考え方はなかったと指摘する専門家もいます。

 特に結婚と家族の在り方をどう見るか。今後のアメリカ社会に大きな影響を与える可能性が高いわけです。