青少年事情と教育を考える 133
性教育を「自己抑制教育」に転換させたトランプ大統領

ナビゲーター:中田 孝誠

 間もなくアメリカの大統領選挙が行われます。
 そこで今回は、トランプ政権下の4年間の教育政策について触れたいと思います。教育政策の中の性教育についてです。

 アメリカでは、特に1990年代から2000年代にかけて、ちょうどクリントン政権からブッシュ政権の時期ですが、性的自己抑制教育が広く行われていました。公立中高校の3分の1の生徒が学んでいたともいわれていました。

ホワイトハウス

 「結婚するまでは性関係を控える」「自分の性を大切にする」「より肯定的な生き方を学ぶ」「自身の価値を知る」といったことを教育目標に据えた、高い道徳性を持った性教育です。
 当時、民間レベルでも多くの団体が性的自己抑制教育プログラムを若者たちに提供していました。

 ブッシュ大統領もこうした教育に賛同し、毎年約2億ドルの助成金で活動を支援しました。これに対して、避妊などの知識や子供の性的権利を語る包括的性教育を推進するグループから激しい反対もありましたが、性的自己抑制教育は確実に浸透していったわけです。

 それが、オバマ政権になると様相が変わります。性的自己抑制教育に対する政府の助成金が削減されていったのです。

 10代の妊娠予防には包括的性教育の方が効果的であるという主張がなされ、オバマ政権もそちらに力を入れるようになりました。そのため、性的自己抑制教育の活動は一時に比べて大きく後退します。
 それでも、性的自己抑制教育の効果については、自治体や多くの団体から報告されていました。

 そしてトランプ政権では、包括的性教育を重視する方針を見直し、性的自己抑制教育の予算を復活させたのです。
 ブッシュ政権当時の半分程度の予算ですが、連邦政府の性教育を性的自己抑制教育に転換させました。

 もちろん支持母体であるキリスト教福音派を意識しての行動でしょうが、子供たちの健全な成長を見据えた政策を取ろうとしていることは間違いないでしょう。