世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

「コロナ」感染、試練のトランプ氏

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、928日から104日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 米大統領候補第1回テレビ討論会(29日)。日本学術会議6人を菅首相が任命拒否(101日)。トランプ大統領、「コロナ」陽性(2日)。日韓、ビジネス往来再開で調整(4日)、などです。

 今回は、トランプ大統領の新型コロナウイルス感染問題を扱います。

 102日午後(日本時間)、一つのニュースが全世界を駆け巡りました。トランプ大統領が2日未明(日本時間午後)、自身とメラニア夫人が新型コロナウイルスの検査で陽性になったと、ツイッターで明らかにしたのです。

 当初はホワイトハウスで療養しながら執務は継続するとしていましたが、同日中にワシントン近郊の医療センター(ウォルター・リード軍医療センター)に入院したのです。

 マクナニー報道官は、トランプ氏は「センター内にある大統領執務室で数日間にわたり職務を行う」と述べており、「軽い症状を呈している」と記者団に伝えました。

 しかし関係者の話として、トランプ氏が同日朝から発熱の症状を訴えていると伝え、レムデシビルの投与を行ったこと、さらにステピエン選対本部長やコンウェイ元大統領上級顧問らが感染したことを明らかにしたのです。
 トランプ陣営に極めて大きな試練です。再選戦略の見直しは必至です。

 現在知り得る経緯を確認しておきましょう。

 トランプ氏は930日、ミネソタ州の選挙集会を開催しました。しかし演説では時折しゃがれ声になり、いつもは1時間30分程度の演説を46分で切り上げました。同行していたヒックス大統領顧問は、この時に体調不良を訴え、帰路の大統領専用機では他の人から離れて座ったのです。

 ヒックス氏は1日、検査を受け陽性であることが判明。ブルームバーグ通信がヒックス氏の陽性を最初に報道し、トランプ氏も事実を認め、自身も検査結果を待っていると明らかにしていたのです。そして翌2日未明に陽性であったことをツイッターで明らかにしました。

 米大統領選と関連して、「オクトーバー・サプライズ」という言葉があります。
 本選の11月、その直前10月に選挙情勢を決定付けるような出来事が起きることが多々あるという意味です。今年は、現職大統領の新型コロナウイルス感染というサプライズでした。

 トランプ氏の動画が3日の夜、配信されました。入院中のトランプ大統領がツイッターに投稿したものです。その中でトランプ氏は、「体調は良くなってきているが、今後、数日間が本当の試練になるだろう」と述べました。

 さらに「ここに来た時は、あまり体調が良くなかった」と認め、その上で「間もなく戻れるだろう」とし、11月の大統領選については「選挙活動を仕上げるのを楽しみしている」と強調したのです。「戦う男」の本領発揮はこれから、というわけです。

 「オクトーバー・サプライズ」によって、争点が再びコロナ対策になりつつあり、トランプ陣営に対する悲観的コメントをニューヨークタイムズなどが繰り返しています。
 トランプ氏の容体次第ということになりますが、このサプライズが吉と出るか、凶と出るかは分かりません。

 人知を超えた神のご意思を待つ気持ちです。健康を回復した時のトランプ氏の変化に期待します。