青少年事情と教育を考える 126
模索の続く少人数学級の議論

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回、学校教育でポスト・コロナの新しい学びについて議論が始まっていることを紹介しました。

 政府が設置している教育再生実行会議では、少人数学級が議題になっています。
 多くの学校で夏休みが終わり、授業が再開しました。学習の遅れを取り戻すのと同時に、新型コロナウイルスの感染予防のためにクラスを分ける対応も取られています。

 国の標準として、公立小中学校では1年生は35人学級、その他は40人学級と定められています。これを少なくすることで、児童・生徒一人一人に目が行き届くようになり指導もやりやすくなること、学力も向上することが期待されています。
 全国知事会、教員組合などが少人数学級の早期実現と教員の確保を要望しています。

 萩生田光一文部科学相は少人数学級を否定しているわけではありませんが、予算などの問題があり、来年度から段階的に行う方針を述べています。少人数学級のためには教員数と教室などの施設を増やさなければなりませんから、簡単にできる改革ではないわけです。

 少人数学級の議論は、コロナの問題が起こる以前から長く続いていました。以前、45人学級から全て40人学級にするまで12年かかりました。

 ある調査では、学級規模を小さくすることで小学校の不登校が減少しましたが、中学校ではその効果は見られなかったということです(『少人数学級はいじめ・暴力・不登校を減らすのか』独立行政法人経済産業研究所)。また、学力を向上させる効果もそれほど大きくないと分析されています。

 文科省では、秋田県や山形県のような、全国学力テストの上位に入る県の事例から、学力向上にも一定の効果があると紹介しています。ただ、秋田県の取り組みを紹介した中には、学校だけでなく家庭の力が学力向上に影響していることにも触れています。

 また、少人数学級の実現は教員の人数確保が関わります。そのためには教員として求められる資質を育てていく必要があります。教員の数を増やしていくことで、資質の低い教員が増えて、かえって学力の差が広がると指摘する専門家もいます。

 少人数学級は、他の要素も含めて総合的に考えていく必要があるわけです。