青少年事情と教育を考える 123
教員免許の国家資格化

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回、学校再開後の子供たちと教師の状況について書きました。

 教師の長時間労働は以前から問題になっていましたが、今はそれに加えて新型コロナウイルスの感染予防と、子供たちの学びの遅れを取り戻す責任を担っているわけです。

 そうした中、学校の教員を国家資格とする案が話題になっています。
 2015年に自民党の教育再生実行本部が提言しましたが、今年6月には萩生田文科相が実現に前向きな発言をしています。

 現在の教員採用は、大学の教職課程を履修するなどして教員免許を取得し、都道府県・政令指定都市単位で採用試験が行われています。

 国家資格化の案は、教職課程を履修した後に国家試験を受験し、1年から2年程度の研修を受けて免許を取得できるようにするというものです。
 国家資格にする目的は、教員の社会的価値を高め、それによって教員の質を向上させるところにあります。

 また、少子化の影響もあって、都市部では教員採用試験の倍率が年々低下しています。長時間労働などで教職のイメージが悪化していることも大きな原因です。そのため、教職に魅力とやりがいを持ってもらいたいという意味もあります。

 一方で、免許取得から採用まで、今の制度以上に時間がかかるため、教員志望者がさらに減るのではないかと危惧する意見もあります。
 もっとも、海外ではフィンランドのように大学院の修士課程まで進まなければ教員になれないという国もあります。それによって教員の専門性と社会的な地位を高めるわけです。

 ちなみに現在、同じように国家資格化が議論されているのが、児童福祉司です。児童虐待対応など難しい課題が増える中、児童福祉司を国家資格として専門的な知識と技能を持った専門職に育てようというものです。

 いずれにしても、子供の教育、養育を担う専門職の社会的価値や質を高めることは、子供の健全な成長のためにも重要です。国家資格化はそのための一つの方法として検討されているわけです。