シリーズ・「宗教」を読み解く 119
21世紀の宗教の使命④
世界の宗教はどのように変化してきたのか

ナビゲーター:石丸 志信

 ここで、20世紀から21世紀に至る間に世界の宗教はどのように変化してきたのか、宗教学者の見解に耳を傾けてみよう。

 一般的には、20世紀の中頃までは近代化とともに宗教は衰退すると予想されていた。

 確かに、経典の内容や教義に用いた表現、あるいは組織形態や儀礼が非合理、非科学的であるとして、それらを近代的な価値観に適合するような変化が現れ、宗教が時代に即応した改革を行う方向があった。

 その傾向を推し進めると、一つはより進歩的な新たな宗教が生み出され、もう一つは、教会離れ、宗教離れによる世俗化が進んだ。

 ところが、前世紀後半になると、欧米先進国の反体制的運動から既存の枠組みを超えて神秘的傾向に傾倒するニューエイジ運動と呼ばれる新たな宗教が台頭してくる。

 一方で、キリスト教の保守派やイスラーム圏において原理主義や復興運動と呼ばれる伝統的宗教への回帰現象が起こった。

 こうしたことから21世紀を迎える頃には、単純に科学が発達すれば宗教は消滅するとはいえなくなった。

【参考文献】藤原聖子編『いま宗教に向き合う③ 世俗化後のグローバル宗教事情 世界篇Ⅰ』(岩波書店 2018