夫婦愛を育む 118
夫のためのベストの行動って?

ナビゲーター:橘 幸世

 主人と地元の観光名所をウォーキングしました。
 例年であれば、全国からの観光客が溢れ道路は大渋滞、地元の人間は近寄らない所です。若葉薫るこの季節にゆっくり散策できるなんて、今年の特殊な事情ならではです。おかげで新しい発見がありました。こんな時だからこそ見えることがあるのですね。

 新しい局面に出くわすたびに、人は失敗し学び工夫しながら次のステップに進んでいきます。テレビでも失敗の経験をテーマにした番組がいろいろありますが、私も失敗談ならいくらでも書けそうです。

 私は日頃、主人と義母の間の連絡係のような位置にいます。
 昼間、義母から主人に聞いておいてほしい事、頼んでほしい事などを言付かって、夜帰宅した主人に伝えます。基本、疲れて帰ってきた主人が食事をして一段落してから伝えるようにしています。

 以前、親族の件で主人が出張から帰るまで待って伝えたことがありました。出先では何もできないし、心配させるだけだから、と思ったのです。が、主人からは「何もできなくてもすぐに知らせてほしい」と言われました。まだまだ察しきれない男性心理。失敗・学習の繰り返しです。

 また、週末は義母に早く返事をしてやってほしいのですが、主人には主人のペースがあるので、促しません(男性は妻に言われてやりたくない)。でも、いよいよ日曜の夕方にもなると、穏やかにお願いします。先日も「はいはい」と言って主人は隣に行きました。「お母さん(私のこと)が安心するからね」と、主人も心配性の私(女性心理)について学習してきているのです。

 もう随分前に読んだ、デール・カーネギーの世界的ベストセラー『人を動かす』の中で、今なお印象に残っているくだりがあります。

 彼の原稿に、出版社の担当者が直しを入れてきました。彼は憤慨して「一つも直すな、そのまま出版しろ」といった旨の手紙を書いて、妻に投函しておくように言いました。随分後になって、彼は自分の未投函の手紙を机の引き出しに見つけます(一通や二通ではなかったと記憶しています)。妻は自分の判断で、投函しないでおいたのでした。彼は妻の判断を正しかったと認め、ありがたく感じます。

 夫の意向や判断を尊重しながらも、夫のためにベストの行動を取る。夫を理解し支えるという点で、カーネギーの妻のような上級テクを自分のものにするのはなかなか難しそうです。

 感情的に書いた手紙が良い結果をもたらさないことが多いのは言うまでもありません。だからといって、彼女は面と向かってその手紙を出すことに反対はしませんでした。夫の性格や仕事における人間関係の機微を理解していなければできないことだと思います。
 読んでから20年以上たっていると思いますが、今なおそのレベルに遠い自分だと感じます。